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信者ブラスバンド高野山【毎週ショートショートnote裏お題】

 信者にはそれは楽奏に旋律が必要だ。そうした要素無くして集団の呼吸を揃えさせ、共通の価値観を身に響かせる事は容易ではない。
 弘法大師空海に愛着を抱き真言宗に片足を突っ込んでいながらあえて言うが、鳴り物禁止の山であるとして浄土系の寺院を排除した事実は、江戸時代の高野山の偏狭ではなかっただろうか。
 私には、まさしくその因果に思えるのだが、金剛流の御詠歌を知る者は、現在の高野山山頂においてさえ少数派だ。鉦を打ち鈴を鳴らし手拍子を加えれば、
「この山は鳴り物禁止の聖地であるぞ」
 と山内の僧侶からもお叱りが飛ぶ。
 僧侶のどなたか1992年のアメリカ映画、『天使にラブソングを……』を鑑賞してくれないか。お大師様が真に望んだ姿とも思われないのだが。
 どのような集団であれ過ちを犯さないわけではない、と肝に銘じ、常に新しい視点や意見を取り入れる工夫を続けた方が良い。さもなければ人心は、もちろん信仰から離れて行くに決まっている。


(409文字)

 ブラスバンド、と表現するには吹きものが無くて残念。


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