大胆にもKing Gnuレビュー
「ああ。あれあれ。何だっけ。最近流行ってる」
時々利用するパン屋に居合わせた女性二人の会話。
「最近どこに行っても流れてるでしょう?
だけどその、曲名が思い出せなくて……、
え〜〜〜っと……、そうだ!
『自白』!」
頼むから別のテーブルの人間まで吹き出させた上に、
変な人を見るような眼差しを向けないでくれ。
(文字数:約3200文字)
すごい素晴らしい格好良いと、
知れ渡って分かり尽くしているものを、
今更レビューするのは、
時代遅れが無理した感があって恥ずかしいと、
常人なら気が引けるものかもしれないが、
先日CSであったKing Gnuの、
ミュージックビデオヒストリーを、
録画して3回は繰り返し見倒したもので、
今頃頭の中に流れ鳴りまくってしまったんだ。
以前からファンである方々には、
腹立たしかったり片腹痛かったりもするだろうが、
後追いとは言え真摯に向き合ってみた中年女性の、
率直な感想という事で御容赦願いたい。
なお、後追い鑑賞である以上、
何らかのドラマ・アニメ・映画等の主題歌であったとしても、
私はそれらの作品に使われた事も、
作品内容も基本的に意識していない。
『Vinyl』
King Gnuを語るならこの一曲ではないだろうか、
と後追い鑑賞ふぜいが言い切ってしまうんだが。
ヒストリーなわけで初期作品から流されるわけで、
このイントロが流れた時点で私は、
「あ。この曲が入ったCD(アルバム)買お」
と思わされたわけで。
この白々しい毒気の底に燻るマグマ的炎熱がたまらん。
その後の彼らの作品にも、
結局この曲の要素が散りばめられている気がする。
と言うより、
クリエイターたるもの常にその時々の全力を、
作品に込めてきたに決まっているんだ。
知られたか知られていないか。
世に受け入れられたか否かの差でしかない。
『Prayer X』
アニメ映像の気っ色悪さにやられた。
Player、じゃないからね。
Prayer、だからね。
lとrの一文字が違うだけでえらい違い、
に思わせて実はそうでもないところがミソ。
「胸に刺さったナイフを抜けずにいるの
抜いたその瞬間 飛沫を上げて
涙が噴き出すでしょう?」
って………………。
ごめんなさい。
ハセコレ@大阪朝日放送『過ぎるTV』的に、
言わせて下さい。
「それ偏光が先書いてましたけど!」
(嘘やで。調べたらKing Gnuが先やで。)
『Slumberland』
この曲は何を差し置いても人形だろ。
ぶっさ可愛くて愛さずにはいられん。
歌ってるうちに全てがおかしくなるのも楽しい。
『Vinyl』が井口さん系の根底なら、
『Slumberland』は常田さん系の根底だな。
(全く知らんし興味なかった人のために:
King Gnuはダブルボーカルです。
井口さんが高音で常田さんが低音。)
ロックンローラーは愛と人生しか歌えないんだ。
小説家も然りよ。
『The hole』
ドラマ仕立ての、
しかもセンシティブな内容の、
ミュージックビデオである事が、
話題になったようだが、
映像はあくまでも、
「分かりやすく表現した」ものであり、
歌詞自体は誰にでも通用する、というか、
通用してもらいたい普遍的なものだ。
フィクションで表す以外に、
どうしようもない一単語が存在する。
そこを把握した上での、
「僕が傷口になるよ」の重みたるや。
『飛行艇』
今頃ヒストリーを見ようと思ったのは、
テレビで見たこの曲のパフォーマンスが、
えらいカッコいいと思ったから。
ミュージックビデオも噂は聞いてたけど面白い。
「王牛」のマントをまとったヒーローが、
どことも知れぬ回廊を練り歩く。
練り歩く間に周りの人物たちは、
何か物語が進んだり巻き込まれたりしている。
現代版の神謡だな
『どろん』
最高にきしょい。
吐き気がしそうにグロテスク。
最近調子が悪いレコーダーがついに壊れたかと思った。
気色の悪い映画の主題歌だそうで、
それで全くもって問題無し。
『三文小説』
この曲も欲しいからいよいよもってCD買おう。
「チャンネル登録しなよ」とか、
「配信ダウンロードしなよ」とか言うなよ。
ワクワクしながらフィルムをはがして、
爪の先で歌詞カードを引き抜いてた、
アナログ世代なんだよ。
もちろん小説家に限った歌詞ではないのだが、
小説家として身につまされず泣かずにはおれんわ。
「くだらない僕の表情や言葉一つで
微笑んだ君がいるから」とか。
『逆夢』
あああもう。
『白日』も好きだったけど雰囲気似てるけど、
『白日』以上に好きかもね。
『白日』はやっぱり雪に埋もれた白のイメージでさ。
それってやっぱり東日本の光景でさ。
生まれた朝こそ積雪だったけれども、
九州出身の私にはやっぱり、
所々で枯れ落ちる花盛りと海の方が沁みるの。
それはともかく『逆夢』は、
冒頭から始まるサビ終わりの、
歌声の不穏な歪み方に持っていかれるよね。
歌詞の区切り方が独特でさ。
ネットで検索して見比べながらじゃなきゃ分からん。
だけども歌声や映像にも助けられて、
支障無く世界観は受け取れるんだよ。
聴いていたら小説が書きたくなるが、
そもそもこの曲は某映像作品の主題歌だそうで、
元になった作品を超えるはずもないのだが、
知ったことか。
作品などはインスパイアの連続連鎖よ。
『Stardom』
これはもう。賞賛するしかないですよね。
それでも是非ミュージックビデオを観てほしいな。
必ずしもスポーツ選手のみを、
別に讃えてなどいない事が、
丸分かりだから。
アニメ化された井口さん常田さんが、
楽しそうなのに泣きまくりなのが沁みる。
更にその部分の歌詞が、
「あと一歩 ここからあと一歩
心がくたびれた足を走らせる
あの日の悪夢を断ち切ったならば
スポットライトに何度でも
手を伸ばし続けるから」ってのが。
まぁそんな事より最高に格好良いのは、
ラストの畳み掛けなんだが。
「栄光の輝きに毒されて
限界の少し先へ」とか。
「人事を尽くし切って今
天命を待つだけだって」とか。
『カメレオン』
人形アニメは個人的に大好き過ぎる……!
ティム・バートンの
『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』が、
大好き過ぎてDVDはもちろんメイキング写真集まで、
購入した私としては、
ハナタレ少年が可愛くて可哀想すぎて、
阿呆の結果の人でなし過ぎて泣ける。
正直本音ではずっと思ってるんだけど、
ヴィジュアル系のクリエイターって、
誰も彼もが神過ぎるんだよ。
文章だけで、
それも世界的にはマイノリティーな母国語で、
どうやってそりゃ私込みで魅了される人々を、
ちょっとでもこっち側に向かせれば良いんだって、
ずっと一人で悩んでいる。
『SPECIALZ』
こういう堂々とした悪ふざけは大好きだ。
悪ふざけに決まってるだろ?
筋肉隆々のスーパーマン化した井口さんとか。
あんましnoteには書き込みたくないXXを、
笑顔でリズミカルに打っている様子とか。
何もかもワヤにしてくれて妙に元気が出る。
「冷静にはならないで」
おっと。そうだったな。
「誰がどう言おうと
U R my Special」
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