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『コンドルは飛んでいく』

 ニッチだがこだわりのポイントについて、
 情熱をもって語りたい。


有名人の功罪

  サイモン&ガーファンクルは嫌いではない。

  様々な苦痛と恐怖に押し潰されかけていた大学時代、
  泥酔した深夜に歌詞カードを見詰めながら聴いた、
  『明日に架ける橋』に大号泣した事もある、
  私だからこそ言わせてもらいたい。

  コンドルは飛ばなくてはならない。

  お気持ちは分かる。
  旅先で出会った雄々しくも切々たる旋律を、
  音楽家としてどうにか自身の本拠地にも披露したい。

  現地の歌詞では直感的に伝わりようがないので、
  それは詩人として母国語の言葉で表現したい。

  しかしながら、
  コンドルが飛んでいない『コンドルは飛んでいく』など、
  神を讃えない祭囃子だ。

  歌詞はともかくあの旋律は明らかに、
  雄々しく広げた翼で大空を舞っている。


庶民なりの放浪

  小学校6年の合奏コンクールで、
  この曲のアコーディオンを担当させられて以来
  (楽器出来ないのになぜ任されたかは思い出せない謎)、

  レンタルCD店に中古CDショップを見つける度に、
  まっすぐ「ワールドミュージック」棚に向かい、
  ペルーの音楽集を探し続けた。

  しかし九州にいた当時の私に入手出来た限りの、
  『コンドルは飛んでいく』は全て、
  インストゥルメンタルだという……!

  どういう事だ。
  真実に歌詞が無い曲なのか?
  そんなわけがないと私の直感はコツコツ脳を刺激する。
  コンドルは飛んでいるはずだ。
  他の鳥ではなく「コンドル」でなければならないはずだ。

  しかし神聖な歌詞として、
  滅多に歌われていない可能性は確かに有り得る。


所変われば手が届く

  大阪は京橋辺りを散策していた時、
  駅前広場で演奏していたグループ、ケルマントゥが、
  『コンドルは飛んでいく』を歌い出した。

  ……声掛けてCD即買いだよ!
  そしてコンドル、飛んでたよ!

  コンドルがペルーの大空を舞う
  太陽の帝国
  ペルーの申し子よ
  アンデスの天空をただ一羽で舞う
  太陽の帝国
  インカの守り主よ

  その気高さを挫ける征服者などいない
  伝説の勇者のように勇敢な
  お前は太陽の申し子だ

KERUMANTUのCD歌詞カードのスペイン語を単語しか分からんけど雰囲気訳

  ……だよねぇ!
  こんな感じじゃなきゃあかんよねぇこの旋律はねぇ!
  もちろん本来のペルーの言葉、
  そのままではないだろうけれども!

  ああスッキリした。めっちゃスッキリした。
  いや繰り返すけどサイモン&ガーファンクルも、
  めっちゃ頑張ってどうにか表現した歌詞だと思うけども、

  コンドルは、飛ばなきゃ!


コツコツやる奴ぁ御苦労さん

  今時検索すれば発祥も来歴もすぐ分かるし、
  曲だって歌詞付きのYouTubeで聴けるよ?
  とどこからか呆れ気味の声も聞こえてきそうだが、

  好奇心に探究意欲とは、
  無論そうした性質のものではない。

  そう簡単には回答に
  たどり着けないからこそ火が点くんだ。
  興味が湧き好みが生じ方向性が定まってくる。
  個性はそれらにより形作られる。

  ワールドミュージック棚ばかりを漁ったおかげで、
  私は今やシャンソンに、
  ロシア人歌手オリガに、
  
  アフリカはジンバブエのムビラに、
  トルコの吟遊詩人ウシュクダラに、
  源博雅の龍笛を再現した雅楽まで、

  全てのCDを、持っている。

  日本人にすらほとんど知られていない仏教音楽、
  御詠歌を習い出したのは、
  そういった流れも影響しての事だろう。
  だって邦楽の楽譜って何あれ縦書きって。

  御詠歌を高校生の部活動に変換した、
  長編小説まで書いちゃったし♪

  菩提寺の御住職に読んでもらって、
  著作権取って今年中にはデータ販売したいなって、
  コツコツやる奴ぁ実際に御苦労さんなんだが、
  苦労に感じなければ傍目には、
  苦労を重ねたとて何が悪いか。

  検索で済ませ切れていたなら、
  この人生は有り得なかっただろう。


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