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愛すべきポンコツ初号機 山中りんたそ

 先週、現在の相棒であるポンコツ2号についてのエッセイを投稿した。夏にエアコンの冷気が出ないというポンコツっぷり(愛すべきポンコツ2号参照)であるが、それでも大目に見ることができているのは、偉大なる初号機のおかげである。

 私たちの出会いは大谷翔平が海を渡った2018年。第1回「壁を走りそうな・・・」のお願い(こちらも愛すべきポンコツ2号参照)を中古車販売店のお兄さんにしたところ紹介してもらった。彼の名前はミニ・クーパー。2002年生まれの英国紳士おじいちゃんである。

 予算の範囲内かつ、可愛らしい見た目に惹かれ即断即決。免許を取った2018年6月頃からポンコツ2号に乗り換える2022年2月までの3年と8ヶ月に及ぶお付き合いが始まった。

 この初号機のおじいちゃんだが、最初の1年間は様子をみていたのだろう。快調な走りをみせ、赤城山や榛名山、伊豆、白川郷に富士山といろいろな場所に私と仲間を連れ出してくれた。ところが、お付き合いを始めて1年が経つ頃になると心を開き、弱みをみせてくれるようになった。以下、初号機が私にさらけ出してくれた弱みである。

🚗信号待ちで急にエンジン停止!!   ・・・の巻
🚗ドア窓、開かなくなる!!      ・・・の巻
🚗暖房、出ない!!          ・・・の巻
🚗カギが締まらない!!        ・・・の巻
🚗運転席側のドアが開かない!!    ・・・の巻
🚗電気回路ショート。ライト点かない!!・・・の巻
🚗天井、剥がれてくる!!       ・・・の巻
🚗スピーカー、”バラララ”!!      ・・・の巻

 これが初号機と私の信頼関係である。そこらのドライバーと車では到底築くことができないものである。どんな姿でも受容するという私の姿勢によって、彼はここまで心を開いてくれた。ありがとう初号機(涙)。ご自身の車が弱みを見せてくれないという方は、普段の車との接し方を考え直すことをオススメする。きっと、その車は本当の自分を見せられずに窮屈な思いをして生活しているはずだ。

 弱みを見せてくれるようになってから、私はいっそう初号機のことが好きになった。しかし、きっとこれは車だけではないだろう。便利なものやハイスペック、効率的なものがヨイショされる世ではあるが、不便なことにこそ工夫や楽しさが生まれ、無駄なことこそ遊び心や子ども心が踊るものである。そして、不完全さを隠している人よりも、不完全であることを楽しんでいる人は素敵だと思う。

 私は初号機から、不完全さを楽しむコツをマンツーマンで教えてもらった。私も、誰かに不完全のすゝめを広めていきたい。


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