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連載小説 『喋る後輩 〜おまけのおまけ〜』
後輩が退職し、地元に引っ越す当日、僕は丁度休日だった。
ほんとに、計画したわけじゃなく、偶然休みだった。
言うほど嘘くさくなるが、本当に休日だった、信じてほしい。
にわかミニマリストの後輩の引っ越し荷物は少なく、宅急便で2〜3箱程度だった。
その他は全部売るなり捨てるなりして処分していた。
以前、訪れたことのあるスープカレー屋のランチを食べたあと、駅に向かって歩いた。
後輩は思い出話やら今見たばかりのことへのリアクションやらに忙しく、常に僕に話しかけていたが、とある店の前で立ち止まり、押しだまった。
首を傾げて、腕を組む。
何事だろうと僕も立ち止まる。
「先輩、、、、、、。」
「どうした。」
「俺がおよそ2年間探し続けていた場所が、目の前に現れました。
オレンジ色の、パソコン修理の看板です。」
「うん、、、、、。
2年間、ずっと、知ってた。」
人は、本心から驚くと、本当に言葉が出て来ないんだな、と、その時の後輩を見て思った。
「なんっ、、、、、、で」
それから彼は無言で僕の鳩尾に2〜4発のパンチを繰り出しながら言った。
「ずっと、ずっと、探してたんすよ、この店を!この路地裏を!!
何で言ってくれなかったんですか!!」
「そりゃ〜、言わないほうが、面白そうだったから。」
何秒かの沈黙の後、美味い日本酒を飲んだ酒呑みのように、旨味を噛み締めながら後輩が言った。
「か〜〜〜〜っ!!!
おいしいっす、あざっす!!!」
そうして僕らはあっけなく改札で別れた。
「またな」
「また。
いつか、うちの地元に遊びに来ることがあったら連絡してください。いつでも案内します!」
「ずんだ餅と牛タンの最高峰を用意しててくれ。」
「先輩のためなら何だって用意しますよ!」
社交辞令かもしれない。
この先、一生会えないかもしれない。
ま、それでもいいか、
楽しかったし。
と思えるくらいの距離感が、
僕らの最適な距離感だ。
僕と後輩はお互いに振り返らずに八王子駅を後にした。
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