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「アルバイト」のお金で食らう飯「常識ない人」のお金で吸う煙草

まん延防止措置の適用

まただ、と思った。
僕はあるチェーン飲食店に正社員として勤めている。入社から早くも2年、今は「副店長」の名札を胸に刺せる所まで来た。これまでも新型コロナウィルスの影響で様々な困難を乗り越えてきた。時短営業や、酒類提供自粛、本当にこの2年間は大変だった。信じられないかもしれないが、1年以上一緒に働いているのにマスクの下の顔を知らないスタッフも数え切れないほどいる。
大変な事は山程あったが、その中でも僕が1番考えさせられる事を書こうと思う。まずは、うちの営業スタイルを見て欲しい。

1店舗に社員は1名ないし2名、他はアルバイトが
約20名弱程勤務している。

これは、うちの定石となっている営業スタイルである。店長・副店長、又は店長・社員が店にはいるが、他は基本的にアルバイトスタッフのみ。高校生や大学生、フリーターの男女スタッフで構成されている。だが飲食店で働いたことがあればこの構成は珍しくないと思う。よく聞く構成だ。

さて、ここまで説明してやっと、この時期に1番困難になる事を言おう、それは
「アルバイトを削って営業すること」だ。

アルバイトは、お金を稼ぎに来ている。

さあ今月はこの工場の売上が見込めません、経費を削減しましょう!溶接のロボットは全台機能停止、ベルトコンベアのロボットは2台停止させます!包装のロボットは1台のみ稼働、これで電気代や点検費なんかもサクッと削減できます!

我々が共に働いているのは人間だ。行けと言われたからではなく、自らの意思で、お金を稼ぎたい一心で面接を受け、研修を終え、日々スタッフレベルを上げていく。そこに無機質な冷たいアームは付いていない。皆心があり、疲れを感じても働いてくれる。そんな彼らを、何も悪い事をしていない彼らのシフト数=給料を、我々は削減しなくてはならない。

この2年間も、「稼げない」と吐き捨て店を辞めていったスタッフもいれば、売上は戻ったものの、その時期に掛け持ちを始めてうちのシフトに入れなくなったスタッフ、どうせ暇なんだろうとやる気が落ちていくスタッフ、沢山見て来た。
全盛期の半分しか稼げないと言うスタッフに、頭を下げて謝って退勤してもらっていた。
「気にしてないですよ!頑張りましょう!」言ってくれる高校生に、何度感謝したことか。

そして、1番痛感であり尚且つ1番安心しているのは、「社員」以上のスタッフは給料が変動していない点なのだ。
微々たるものではあるが、賞与も時期は変わらず貰っていた。
こんな二律背反があるだろうか。アルバイトに「辛いね」「ごめんね」「頑張ろう」と言いながら、自分は何一つ変わらぬ日常を送れる。これは嘘というジャンル分けなら一体何のための嘘なのか、よくわからない日々が続いた。
更に頭の中で、こう結び付く。アルバイトスタッフが本来貰えるお金で、僕ら社員は変わらず飯を食えている。と。
これは誰に感謝すればいい、誰に謝ればいい。わからない。スタッフの用事が重なってシフト人数が足りない方がずっといい。足りないを増やすより、余りを切るほうがずっと辛い。自分で埋めていく次の週のシフトを眺めて、何度も思った。週5、6は入っていた店1番のベテランを2枠しか入れていないシフトを眺めて、何度も思った。休業手当も出ているのでそれにも多少気持ちは救われたが、それでもアルバイトの不満は底をつかない。
シフトを減らした土日の夜、たまに忙しくなった日に、お客さんに提供時間だなんだで怒られた時なんて気分は最悪だった。人件費削減はしなければならない、だがお客さんが全く来ない保証はない。やるしかない。課題は山積みだった。

そして、それとは全く違う視点から、
こういうことも思ったりした。

「常識ない人」のお陰で給料が貰える

そしてこれもだ。外出自粛で街に人がいなくなり、閑散としても店は開いている。時短営業の檻に入れられているが、檻の中はエサだらけだ。
世間一般からしてみれば、1回目の緊急事態宣言の時に、外に出歩く人間を「常識ない」「迷惑な人」と捉えただろう。だが、我々飲食業界はあの時期は特に、そんな「常識ない人」と「政府の出すお金」で成り立っていたんだ。それが無かったら一瞬で会社は潰れていただろう。
「常識ない」と呼ばれる数多の人間のお陰で、休憩時間にiQOSを嗜む事が出来た。だってそうだろ、僕達の給料の源なのだから。感謝極まりない。

今回のまん延防止措置は3週間程度、予防接種の摂取証明と身分証明があればお酒だって飲める。前より多少緩和されている。僕より頭の良いスーツの人達が行き着いた考えだ、そこに口を出すつもりは無い。

いつか、マスクの取れる時代を見てみたい。スタッフ達の笑い顔や泣き顔、たまには怒った顔を見れる毎日を過ごしたい。「常識ない人達」の偏見が無くなった時代で、大人数でご飯を食べたい。
切に願い、ここに記す。

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