「天気の子」見てきた日記

 なんか続けて映画の感想を書いてる気がするけど、久々の更新するには良いネタだと思ったので、今回も映画の感想を書こう。
 というわけで今回は新海誠監督の「天気の子」の感想です。
 ネタバレは多分あるので、気をつけてね。

 土曜日、早く見なくちゃ!とかは全く思ってなかったが、良い感じに予定がなかったのでちょうどいいと思い、「天気の子」を鑑賞しに行くこととした。
 上映に関しては近くにうるさいオタクもスマホを点けだすクソメガネもおらず快適に見ることができたので視聴環境は上々。
 さすがに「君の名は。」でドチャクソに売れに売れた後の作品なのでスクリーンはめちゃでかいし、めちゃめちゃパンピーなカップルとか大勢いたので売れるって大事なんだなあと思った次第です。

 内容としては、島から家出した男の子の帆高くんが都会の女の子の陽菜ちゃんと出会って、障害を乗り越えながら(乗り越えれてない気もする)世界を救……わない!!って感じです。
 とりあえずまず感じたのは「これって俺たちが慣れ親しんでむしろ最近見なかったセカイ系なのでは……?」というところ。
 帆高くんは特別な力も特殊な家庭事情も(おそらく)なく、何の変哲もない男の子、毎日感じていた息苦しさから逃げ出すために雨が降り続く異常気象に見舞われている東京という都会に、家出という形で逃げ込む。
 一方の陽菜は親が亡くなって東京で弟と二人暮らし。ある日母親が入院していた病院から見た一筋の晴れ間を追ってそこで願えば必ず一帯が晴れる「晴れ女」としての異能力を手に入れる。
 しかし物語が進むにつれて晴れ女は能力の代償として人柱になる運命が待っており――ーー。

 はい、どうですか。ほら。この筋書き完璧にセカイ系でしょ!?
 ボクとキミとの関係がそのまま世界につながる。彼女を救えば世界は救われず、世界を救えば彼女は救われない。そういった類の物語なのは間違いではないのは確か。
 でもここで少し違うのは、救う側の穂高は最初から「救う」以外の選択肢を考ていない。眼の前から陽菜がいなくなって、そのまま何とかして救い出そうと動く。そこに葛藤はなく、子供の純真さとしての意思で走り出すのだ。
 ここまでで帆高はこの東京、ひいては社会や法律から逃げ出すことを決意し、そのために走っている。その逃げ出すのに理由となる横にいるはずの陽菜が消える。その逃げ出す=救うの構図に今度は変わっていく。
 社会の道を違えることと陽菜を救い出すのが同じ道の上にある以上、目的も大きく変わらず、葛藤も必要なくシームレスに大人を振り切るシーンへと繋げられるのはキレイでいいと思った次第です。
 本来、十代に世界の命運を任せるような選択をさせるにあたって、葛藤なんて必要なのか、むしろ本人が得られる社会の広さから考えると「世界を救う」なんて選択肢、天秤にかける事自体難しいのではないかと思ってはいたんですよ。
 眼の前の大事な人か世界か、なんて選択肢を高校生に選ばせる時にその天秤は果たして釣り合っているのか疑問があるので、今回「天気の子」で見たセカイ系としての心情展開はとても良いと感じました。
「君の名は。」のような爽快感や大団円ハッピーエンドに対して、「天気の子」は君と僕の世界とそこから得られるカタルシスがメインで、個が救われる代わりに全が犠牲になる、帆高にとってのトゥルーエンドにどう感じるかで評価が変わると思う。ちなみに僕は「君の名は。」より好きです。Blue-ray買いたいくらい。
 ただ、恐らく君の名はのようなヒットはしないだろうなとは思いました。大多数一般的聴衆が欲しがっているのは間違いなく「君の名は。」のような彼女も世界も救う物語で、すべてが報われるものであるはずなので、今作はそこからは外れた、全体世界を蔑ろにして真っ直ぐで小さく狭い個人世界の選択では自ずとふるいの目が荒く、残るものが少なくなるもの仕方ないとは思う。

 まあ、それでも僕は推すね。
 帆高が東京に出てきた理由は語られないが、恐らくあそこまで徹底して描かないってことはそれは意図あることで、それが感情移入しにくいとかいうのであれば僕的には理由を語られたほうが感情移入しにくいのではないかとも思える。それは殆どの人間が「家出してまで東京へ行く」という息苦しさを感じたことがないからだ。
 君の名はの三葉のように、田舎から都会への憧れは比較的万人に共感得やすく詳細を語るに足る理由があり、必要があったのだ。
 設定への説明不足とか、周囲の人間のリアリティからの隔絶とか、そういうツッコミどころはいっぱいあるけれど、そんなもん関係なく、そんなとこ見なくてもいいくらいに帆高と陽菜のつながりと若さが上回っており、救出のカタルシスと二人が手を繋ぐ美しさで満足なのだ。
 「時空を越えた大恋愛」のような物語を求めていけば間違いだが、「どんな世界であろうとも君と僕が手を繋ぐ」ただそれだけで良い物語なんだから、そこへの煌めきの美しさを見る映画なんだと認識してほしい。というか時空を越えた大恋愛もツッコミどころだらけだあるからね。

  あと君の名はでも思ったけど、周りの人間が「良い人」しかいないよね。
 身内がとことん主人公に対して優しいというか、自己犠牲ができるとても美しい関係なのはなんかご都合主義と捉えられてもしょうがないよね。


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