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「初手出し負けリスク」からプレイングで重要なことを学ぼう

〇記事の趣旨

 先日、「ダメージ計算ができるようになれば基本は身につく」という趣旨の記事  ランクマッチで勝ちたいなら「ダメージ計算」をできるようにしよう!|へる (note.com) を書かせていただきましたが、これでも触れたように、ポケモンのランクマッチはいかに勝率を高めるか、要するにいかに負けないか、つまりはどれだけ負けにつながるリスクを減らせるかというのが重要です。
 今回は別の切り口として、「ストーリーをクリアすればなんとなくわかる」からこそ、いざ対人対戦をしてみようという段階でも「なんとなくわかってる感」がしてしまいがちだけれど、実は対戦で必要な考え方が詰まっているよ、ということで「初手出し負け(相手の初手ポケモンに勝てないポケモンを自分が初手にだしてしまうこと)のリスクを題材に話してきたいと思います。

 先日同様、初心者の方向けの記事になっていますが、これを理解することで「ダメージ計算の勉強」で身に着けた基本をどう活用するかということがわかると思いますので、よろしければお付き合いください。

 なお、この記事はポケモンについて触れるものですが、対人対戦ゲームでなにが重要か、という視点の話でもあるため、他の競技にも流用できる話ではあると思います。

〇初手出し負けがなぜ大きな不利になるのか、説明できますか?

 わかります。わかりますとも。正直皆さん「そりゃ出し負けは不利になるのはわかってるよ」って思ってますよね。では、説明の前から突然質問で恐縮ですが、「具体的にどういう問題が起こるのか」を説明できますか?
 あえてこうもお尋ねしましょうか。心の中のどこかで「別に出し負けたとしてもテラス切ったりしてなんとかなるし」みたいな感覚だったりしませんか?

 たしかに、現実的に初手出し負けしてもテラスタルで無理やり切り返したら、勝ててしまったということは発生します。また、世間的に情報の出回り方として、「どうしてそれをすれば大丈夫」というちゃんとした説明のないまま、「このポケモンが初手テラスすればOK!」みたいな動画があったりもしますから、特に初心者の方がそう思ってしまうのはわからなくもありません。
 でも、それはたまたま結果的になんとかなった、あるいはたまたま奇襲が成功したら勝てるというだけで、限定タイミングの成果をブーストできるかもしれないだけの話です。
 だから、今回はとりあえずそういう話をいったん忘れていただき、リスクの影響をしっかり考えてみませんか。

〇初手出し負けは単に「今の対面が不利」なだけではない

 さて、もし現実出し負けた側ができることはなにがあるでしょうか。
 普通に考えれば、「テラスを切る」か「ほかのポケモンに交換する」ことくらいしかできませんよね。そのまま居座っても一方的に1体失うだけですから。つまり、この時点で相手の選択肢はなんにも縛られていないのに、こちらの選択肢がめちゃくちゃ縛られてしまっています。
 本質的な問題はまさにこの「選択しがだいぶ絞られてしまう」こと。これこそが大問題なのです。

 ポケモンはお互いのプレイヤーが、「同時に」行動を選ぶゲームですから、常にお互い「ここで相手はなにをするのか」を予想して戦わないといけません。当然予想があたれば、それに基づいて行動を決めている自分が有利になるわけですから、プレイヤーは必死に相手の情報を対戦中に集め、予想がよりあたるように努力しています。例えば相手がきあいのタスキをもっているのか、こだわりスカーフをもっているのかといったアイテムの予想って、すごい大切ですよね。
 そして常識的に考えて、相手が選べる行動が少なければ少ないほど、こちらは相手の行動の予想を当てやすくなります。

 ちょっと考えてみてください。
 出し負けした側は、普通テラスをきるか交代するしかないわけですよね。最初お互いがポケモンを6体見せ合っていますから、もし交代するならあいつがいそうだなっていうアタリはつくと思いませんか。
 そして、もしそのポケモンが後ろにいるなら、もうもう1体がこれじゃないと全部物理攻撃のポケモンになっちゃうから、最後のポケモンはこれが怪しいな、みたいな3体目の予想も同時にできてきますよね。
 さらに、もし交換しても大丈夫なポケモンがそもそもいなそうなら、相手は3体のどれかのポケモンがダウンすることを許容するか、テラスをきるしかないわけですから、普通に考えてテラスしそうだな?みたいに予想ができてしまいます。
 そして、その予想に従って相手は一番安全な、あるいは一番リターンが大きそうな行動を選んでくるわけですから、対戦ペースを握っているのはどう考えても相手になってしまいます。
 お互い別に有利でも不利でもない対面になった時に比べて、いかに劣勢かわかるでしょうか。片方だけが予想を当てやすい状況が初手からできてしまうんです。

 そしてこれは、実は初手で終わってくれる話ではないんです。
 例えば上手なユーチューバーの方の動画をご覧いただくと、「飛行タイプのポケモンが目の前にいるのに地面技をうつ」ことがありませんか?
 慣れてくれば、ある程度みんなができるようになってくるのですが(一応私くらいの順位の層でも結構やったりやられます)、初心者の方にしてみれば、「なんで無効なのがわかってるのに無効の技をうつの?」となるのではないでしょうか。
 でも、この記事の話の流れで、なんとなくわかってきませんか。「だってあなた交代しなきゃ負けるでしょ」という予想をたてて(実際居座ったらこっちが勝つわけで)、後ろから出てくるのは多分これだから、だったら地面技を打とう、となっているんです。つまり、初手の対面の次の2手目の対面でも、そのまま不利対面が続くことが十分ありえるんです。
 他にも単純にボルトチェンジといった交代技をうたれて、単純にまた不利対面ができあがり!ということもありますね。それだけ、初手に出し負けした影響は尾を引く問題になりかねないのです。

〇選択肢が少ないのは安定行動とは異なる

 さて、この選択肢の数という話をするとき、万が一にも誤解を生まないようにふれておきたい話があります。

 ポケモンには、「安定行動」という、「ほぼリスクがなく自分にメリットが起きる行動」という考え方があり、それは大抵強いという法則があります。
 例えば一定の耐久をふったポケモンが、キョジオーンの前で身代わりするというのが有名なパターンですね。塩漬けをしてきても身代わりが1回耐える、他のポケモンに交代されても身代わりが残る。ステルスロックをまかれても身代わりが残る。無駄にならないのがわかりますね。

 ポケモンはルール上お互いの行動選択回数が試合終了まで同じゲームですから、1回行動が無駄になってしまうと、それだけ不利になりますよね。麻痺状態にしびれで動けないとめちゃくちゃ不利になるのも、単に対面どうかという以前に、自分だけ1回行動ができていないんだからそりゃ不利になるわけです。だから無駄が起きにくい選択をとっていくのが強い、ということですね。
 この安定行動がある場合、いろいろな選択肢があっても、この安定行動を選べばいいみたいになることも多々あるので、別に選択肢が広かろうが狭かろうがみたいに感じてしまうことがあるかもしれません。
 
 なんでわざわざこんな話をしだしたかというと、先月のカジュアル対戦や、マスターボール級にあげなおすまでに、「まあ初手、相手がなんであれ、とりあえず初手にパオジアンを出しておいて、対面負けそうならヘイラッシャとかに引けばいいや」くらいの認識なんだろうな(と選出等を決めるまでの時間から推測される)、という方と結構対戦したからです。
 確かに、「苦手ポケモンに対面してしまったら有利ポケモンに引く」のはサイクル戦の基本ですし、ヘイラッシャに引けば解決できる状況は結構あるとおもうので、まあそれでなんとかなるみたいな認識になってしまうのもわからなくはありません。しかしこれ、別に「安定した行動を選んでいる」わけではなく、「そうしないといけないからそうしている」んです。
 それを読まれて対面がとんぼがえりを押していたら不利対面が、みたいな話は勿論、現実的には相手に主導権を丸投げしているだけで、自分はただ引かされているだけなんですね。

 そもそもこれが安定行動だというなら、受けループのようなパーティはひたすら安定行動しかしない最強パーティになってもおかしくないわけですが・・・。まあ現実的には・・・ですよね。
 それにちょっと一歩引いてみてほしいのですが、もしパオジアンからヘイラッシャに引いたらなんとか試合が続くとして、結局1ターンわざをうつでもなく交代させられているわけですから、不利になる程度はともかく「1ターン失っている」のはかわらないと思いませんか?
 少なくとも損しているのは間違いないと思うのですが・・・。

〇初手テラスは切らずにすむなら切りたくない

 さて、初手テラスで解決!みたいな話も触れていくのですが。
 まず、確かにそれで勝てる試合というのは存在します。それは事実です。しかし、逆に「テラスで先に1体もっていったあと、後ろのポケモンにまくられる」こともあるのも事実ですよね。
 これってどういうことなんでしょうか。

 よくあるひっくり返ってしまう状況としては、なるほど確かにテラスタルで有利不利を逆転させて先に1体倒しているのですが、そのテラスによってなんらかの属性の攻撃が自分のパーティに一貫してしまい、例えばフェアリーテラスタルしたハバタクカミの眼鏡ムーンフォースで全滅したり、みたなのがあると思います。
 後先考えないテラスを切った結果、目先のプラスはとれたのだけれど、ゲーム進行ペースを完全に失ってしまった典型例ですね。

 テラスシステムは今作における切札で、なるほど初手に限らず有利不利を逆転できる必殺技ですが、それはお互いが同じ回数使用できる切札です。つまり、相手も自分と同じようなひっくり返し方ができます。そして後からひっくり返されたとき、自分にはもう切札は残っていませんから、相手にすれば「予想に不確定要素がより少なく」ゲームを進行することができます。
 だから、同じ初手にテラスタルをきるにしても、「それで勝負が決定的に優位になることが見込まれるからする」のか、「せざるをえないからする」のでは、区別しないといけません。大抵ひっくり返されるのは後者のパターンですよね。だって計画された切札の使用ではないわけですから、どこかに穴がでてしまうことだって十分出てきてしまうでしょう。
 初手に切札を切るなら、どうしてそれで勝利できると推測できるのかをしっかり説明できるような状況でなければ、こういうことになってしまうのです。だから、上手い人同士の対戦の動画とかをみると、計画的なものを含めてもそこまで初手テラスだ!になっていませんよね?

 でも、初心者の方がいきなりそんな理屈的な説明がーとか言っても難しいと感じてしまうかもしれません。だからシンプルにこう考えてみませんか。
 「自分が不利になる初手をとっていなければ、そもそもこんな悩みはないわけで、無理やりテラスで勝てたとしても、それはたまたまリカバリーできただけかもしれない」と。
 結果は結果。結果が勝っているなら過程が全て正しいわけではありませんから、あえてそんな「切札を切らないといけない」状況にする必要なんてないんです 

〇どうして初心者の方がより出し負けしやすいのか

 さて、ここまで話が進んだら、どうして初心者の方のほうが上手な方よりも出し負けする機会が多くなってくるのか、なんとなく想像がついてきませんか。

 上手な方は、実際には初手の対面ができる前、選出画面から「おそらく初手はあれだろう」とか、「対戦の流れはこうだろう」とかを常に推測しています。自分の視点は勿論、相手からは自分のパーティーがどう見えているのか、という視点でも考えることもできます。
 推測に必要な知識等は当然ありますが、そういった基本的な知識部分は、前回の記事のようにダメージ計算ができるようになるくらいになっていれば、土台はできていることがほとんどです。そしてそのうえで、出し負けしないよう・・・というよりも、「試合の流れをきちんと推測する」というプロセスを作っているので、「結果として」初手出し負けも減らすことができ、リスクが減った結果勝率にも一層反映されていくわけですね。
 それがまだできないうちは、「結果として」初手出し負けも増えてしまうということなのです。

 そうです。
 重要なのは、初手出し負けのリスクを正しく把握し、その問題点を理解しているから、それが起きないようにするよう頑張る・・・だけではないんです。
 その理解を元に、「試合の流れを推測する」という行為をちゃんとしないといけないと理解し、その修練をしているからこそ、結果として初手出し負けのリスクも軽減できるんです。
 だから、初手出し負けがどういう問題があるのか、を正しく認識することが、プレイングで大事なことを理解する助けになるんですね。
 

〇簡易なまとめ

 さて、だいぶ長くなりましたから、簡単におさらいしましょう。
 〇 初手出し負けの問題点を正しく理解すれば、プレイングの根幹である
  予想の重要性も理解できる
 〇 自分の行動を制限される状況にならないよう、ちゃんと試合の流れを
  推測し続けられることを目標とするべき
 〇 上手な方は、それができているから、結果として負けるリスクが
  減り、成績も安定して高くなる

 いかがでしょうか。
 あまり長くなりすぎるのもどうかと思いますのでここで終わらせていただきますが、「なるほど」と少しでも思っていただけたようなら、一度過去にご自分がみた対戦動画等を見直していただき、「なるほどそういうことなのか」といった理解を深めてみていただければと思います。

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