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陽菜子はこんな人(だと思う)

【あわせて読みたい:これは短編「愛を犯す人々③陽菜子」の付録です。読むと二度美味しくなる裏設定を、全部載せでお届け。すみません私が陽菜子を 好きなんです、さっぱりしてて平和な陽菜子の日常、陽菜子を発芽させてみる、陽菜子の好きなもの。他】

 戴き物のピンクのアイマスク(ジェラートピケです)から立ち昇って、瞬く間に紡ぎ出され、身体性に秘められた豊かで露わな世界を垣間見せてくれた、この陽菜子。アイマスクをしてキャミソール一枚、ノーブラノーパンで立ちつくしてロリポップを咥えたまま完全発情している妙齢の女性に、どれほどの需要があるかわかりませんが、彼女を徹底的に触り倒したい、という私の彼女への愛情が、この本篇にはたっぷり込められています。愛です、皆さん。大・好き・だ!すみません。

 さて、日頃の陽菜子はどんな人なのかというと、リケジョで、結構、サバサバしてて、淡白。髪はロングでパーマもかけてますが、服は至って中性的で、ブラウンベースの黒眉ボーイフレンドメイク、スニーカーっ子です。職場が男だらけでも割と平気。感情より理論を優先、仕事はサイボーグのようにこなし、むしろ女子ノリは苦手。昔からそうなんです、女の子たちの話は論点が見えないうえ、自慢ばっかりで、愚痴ばっかりで、卑屈で、人の話を聞いてない癖に、人には言うこと聞かせようとする。口約束はいまいち信じられないし、なにか気を遣ったつもりでも「そんなつもりで言ったんじゃない」と来る。大事にしてあげないと怒るし、褒めてあげないと拗ねる。結果が全てなのに。と陽菜子は思っています。たまに、情緒不安定な(数少ないがゆえに出っ張りがちな)女子がトイレで泣いてたりするので、ただでさえ女子が苦手な陽菜子はドン引き。めんどくさいなぁ。仕事できないほど悲しいなら、今日はもう早退すればいいのに。陽菜子ちゃん。そういうわけにもいかないんですよ、辛い時、泣いちゃう子だっているんです、それでストレスが発散されて、頑張れる子だっているのです。

 勘の鋭い方はもうお気づきかもしれませんが、陽菜子は蒼唯くんの後輩です。蒼唯がぶつくさいいながら会社に残っていたあの日、陽菜子は陽菜子でオフィスの別の島にいて、明日クライアントに送付する「機能一覧表」を黙々と修正していました。男性が圧倒的に多い職場なので、女子だけ集まってお昼にお弁当をつつくような風土がなくて助かったなぁと思っています。蒼唯のこと?陽菜子はイケメンスキーじゃないからなぁ。でも服の感じが実は好きなので、ちょくちょくチェックはしてます。あ、秋服用に靴買ったんだ。的なチェックですね。蒼唯は、真面目で・冷静で・仕事が早くて・勘のいい子が後輩にいるのを、素直に喜んでます。陽菜子の無自覚に性的な雰囲気は嫌いでもないのですが、年下リケジョ・真面目・新婚・同じ会社は完全に埒外です。プロジェクトが同じ時は足場を任せられる後輩、プロジェクトが違う時は「向こうのほうの花壇の花」くらいの立ち位置ですね。

 航平とは、友人の友人のパーティに成り行きで嫌々出席したところ、酔い潰れた航平を介抱するうちに自分が寝てしまい、周囲に誤解され、違うよ嫌いじゃないけど、とか言ってたものの、本人たちもなんとなくそんな感じに。2年の交際ののち、いわゆるナシ婚ですね、式はせずに、去年、新婚旅行にだけ行きました。旅行はイタリアに10日間。晩婚化著しいこのご時世に、20代半ばで入籍。決断が早い人同士だったんでしょうかね。

 航平は土日休み、中規模メーカーの法務部です。お、パーティーで酔い潰れたりする割に、手堅い感じなんだね。陽菜子と航平は、相手の生活を大事にしてます。男友達に近い感じで、家事や料理の分担は決まってません。どっちかがしなければどっちかがやり、どっちかがやれば次はどっちかがやる。タイミングやバランスがいいのを二人は相性がいいからだと思っています。セックスには、お互いそれほど情熱はなく、航平も探究心がないタイプなため、月1回くらいの頻度で朝勃ちのついでにする二人のセックスは、20分かからない、挨拶みたいな手軽で気楽な繋がり。でも、それで二人は満足してます。陽菜子も、航平とはそれくらいがちょうどいいと思ってる。ほんと、ちょうどいいんですねお互い。お風呂も一緒、ベッドも一緒、基本的に土日もべったり。仲はいいけど、性か情かでいうと情なのでしょうか。

 陽菜子は交際中に二回だけ火遊びをしたことがありますので、紬さんに自己申告した「悪い子」は必ずしも嘘じゃありません。ただし、どっちもそれほど楽しくなかった。陽菜子は航平が二人目の彼氏。一人目が大学一年生の時に一年くらい付き合った優男で、それからずっと恋愛なくて、航平と出会いました。なんとなく、男の人ってみんなこんな感じなのかな?、もしかして違う人ならもっと楽しかったりするのかな?って、浮気してみたものの、どちらも、めんどくさいしバカの一言に尽きる。航平といる方が全然いいし、逆に航平がすごく自分を大切にしてくれてるのがわかって、陽菜子は入籍後はもう航平とだけ一緒にいる、という流れで、完全に納得していたつもりでした。

 そんな陽菜子が紬に見初められて掘り尽くされ、とうとう紬の前でだけこんなトロットロになってるのがまた、素晴らしいわけですが、その詳しいところは本篇に譲りましょう。本篇に書けなかったことといえば、陽菜子が紬の勧めにまんまと乗ってVIO脱毛したことくらいですかね(陽菜子の陰部は最小限にしか毛がないので、とても舐めやすいです)。

 花野さん。花野さん、例のアレを。え? うーん、陽菜子は喜ぶんじゃないかな。賭けかもしれないけど、私は聞かせてあげたい。では陽菜子にヘッドホンを渡して。

花:あのですね、これをまずお聞きになっていただいて。
陽:はい。

 何を聞かせているか? それはベッドシーンの音声。紬さんの愛の言葉を、陽菜子は気持ちよすぎて聞き漏らしてると思うんですよね。ちょくちょくいいこと言ってくれてるんですよ。冷静になってみてください、ベッドで女性に「あー、気持ちいい」以外のことが言えない人、結構多いんです。老婆心ながら…聞きたいのはお前の感想じゃないんだよと。なりますからね、お気をつけくださいね。部活的お友達的な関係ですとまあ、それでいいのかもしれませんが、体面上恋愛になっているならばですね、やはり、あー気持ちいいと言ったところで、相手がそれを喜んでいるかは、考えないといけませんよ。たぶん。喜んでくれるような人といられるなら、それは大変な僥倖です。

 そんな人といますか。おめでとうございます。もう一度思い返してみてください。それはその、あなたを見つめて微笑んでいるようで、あなたの背後にあるテレビに映った照明をぼんやりみてたりは、絶対にないですか。実はそれに気づいてるけど、他にどうしようもないから気づいてないふりしてませんか。いえ、もう、答えなくていいんですが。はい。

 間が…もたなくなった花野さんが、こっそり戻ってきました。そう、いいのいいの、録音は2時間あるけど、全部聞かせてあげて。ほら、だんだんむずむずしてきたみたいですよ、口もなんとなくとろんと開けて、しばしば唇を舐めています。いい感じに茹で上がってきましたね。

花:見た目、金平糖みたいに可愛い女の子で、話すとすごくさっぱりしてて、透き通った感じがして妖精みたいで、性的なオーラなんて全然感じなかったのに…人って、こんなに雰囲気、変わるんですね…。

 まさか。私が大・好き・だ!と宣言する女の子がエロくないわけがないのですよ。勿論です、可愛くないわけもない。こんなマカロンみたいな女の子はなかなかいませんよ。食べちゃいたい。でも可愛いからずっとみてたい。お皿の上に乗ってるのも素敵、レース紙に乗ってるのも素敵。ガラスケースのなかでちょこんと待ってるのも、素敵。持ったときに潰れそうになっちゃうこの繊細さ、なのに中身がほんのりはみ出てるだらしなさ。ええい食べちゃえ、一口でうっとり。二口でじんわり、三口、もったいない…!
 大・好き・です。たびたび、すみません。

陽:失礼します。あの、聴き終わった、んですけど…。
花:おつかれさまでーす。あの、突然ですが、陽菜子さんはとっても可愛らしいですね。
陽:へ? …私、ちょっとお手洗い行ってきていいですか。
花:あ、すみません、大丈夫なんです、もう、今日の面談、終わりなので、帰って大丈夫です。
陽:…?  はい。じゃあこれで、失礼します。
花:ありがとうございました。

 あーほらほら、トイレの前で、なんだか思案顔で立ち止まってますよ。理性と戦ってますねこれ。可愛いなぁ。あ、入りました。負けましたね誘惑に。ああ可愛い。

 どうせね、一回、知ってしまったら、自分一人じゃ全然、足りないんですけどね。

 陽菜子の好きなもの。7ptのHG丸ゴシックM-PRO。考え事がある日、チルアウトなアンビエントラジオを聴きながら深夜まで黙々と編む、レース編み。珍しい野菜が入っているサラダ。一緒に目が覚めた時に寝転がったままする航平とのハグ。や、航平とぶらぶらショッピングを楽しむ、みなとみらいクイーンズスクエア。下町散歩で入る甘味屋や蕎麦屋。担々麺。毎年冬に買い替える、ボタニカル柄の大判マフラー。ズブロッカ。システムアーキテクト試験の勉強に使ってる、美術館で買った動物柄のビニール付箋。夕立の直前の一瞬。先入先出法。フーコーの振り子。春と秋の数週間だけ、週末に、愛車のヴィアンキで乗ってまわる近所のサイクリングロード。紬がたまに、ふざけて毛先でくすぐってくること。紬とのセックス。が、終わってシャワーのあといつも、疲れてて動けないから紬にかけてもらうドライヤー、の熱から自分を守ってくれる、紬の優しい手の、丁寧な動き。を、思い出しながら自分でかける、ドライヤーの音。

以上です。

本篇は、こちら:

わたしの歓び、あなたの自由:

紬さんは、ここ:


今日は明日、昨日になります。 パンではなく薔薇をたべます。 血ではなく、蜜をささげます。