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夜明けの列車に飛び乗って - 7年越しに結実したニューヨークで感じた異国情緒と冬の情感 -

配信リリースから早3週間ほど。
2023年を締めくくるGOOD BYE APRILの新たなウィンターソングです。
4年以上前からあった曲をリリースすることは稀有なことなので、記憶を辿りながらこの曲のことを記していこうと思います。

「2019年のお正月につくった曲」とあちこちで話していますが、その前にまず2016年、僕は父とともに父の友人を訪ねてニューヨークへ旅行したことがありました。

僕にとってこれがはじめての海外旅行でした。
5月のゴールデンウィークだったのですが、ニューヨークは思ったよりとても寒く、地下鉄の雑多なホームやホテル横にあったDELIに深夜に行ったこと、夜中まで遠くで鳴ってるサイレンの音など、印象的に胸に残っているシーンがたくさんありました。

2017年になり、バンドは初のホールワンマンライブという挑戦をします。
その会場が当時のマウントレーニアホール(現:プレジャープレジャー)でした。

とにかく自分たちの力だけでバンドを前に進めなければいけない時期で、心強い仲間の力を借りながら自主でCD(ミニアルバム "FLASH")をつくったり、フリーライブをたくさんやったり、手探りながらがむしゃらに活動していた時期でした。

そんな中、フリーライブを通じてたくさんの方に知っていただけたこともあり、憧れのホールワンマンをやれることに。
また自分たちはここから始まるんだという気概やワクワクを届けたくて(同時に自分たちを鼓舞したくて)、「夜明けの汽車に飛び乗って」というタイトルをワンマンに付けました。

それからおよそ1年半、2018年の終わり。
正念場の季節は続いていました。
クラウドファンディングで制作したフルアルバム「他人旅行」が無事完成し、年明けには最大規模のキネマ倶楽部でのワンマンを控えていました。

アクセルベタ踏みだけど思うように速度は上がらない、
そんな感覚の時期が続いていた気がします。
僕は、バンドに新しい風を吹かせてくれるような曲がつくりたいと思っていました。
年末、NHKだか何かでサザンオールスターズのスタジオライブを放送していて、そこで演奏していた「YOU」に感銘を受けます。
こんな曲つくりたい!と僕は思いました。

その数日後。スーパーで買い物をしていたら、ふとスーパーの有線から「YOU」みたいな自分たちの曲が流れてくるイメージがぶわっと湧きました。
急いで家に帰り、湧き上がったイメージをボイスメモに残しました。
それが、「夜明けの列車に飛び乗って」の原型でした。

そして、年が変わり正月。
この曲をかたちにしようとボイスメモを聴いて、とてもピュアなメロディーだと思いました。
メロディーに触発されるように色んなイメージが僕の中で連鎖して繋がっていきました。
2016年に行ったニューヨークの異国情緒溢れる街の匂い、
またここから始まるんだというワクワクに溢れた「夜明けの汽車に飛び乗って」という言葉。

それらが、この曲のまっすぐなメロディーにぴったりだと思いました。

デモは1日足らずで完成し、いつもは後から書くことの多い歌詞もこの時点で書き上げていて、しかも今回リリースするにあたり書き直したのはたった2箇所。
湧き上がったインスピレーションのままつくったデモが、限りなく「完成」に近いものだったのです。

サビのメロディーに合わせて汽車→列車に変えて、それからおよそ4年ほど、「夜明けの列車に飛び乗って」というデモがバンドの候補曲一軍に居座り続けます。
今思えば、作品のテーマ的にも2019年のミニアルバム「I MISS YOU SO LONG」に入ってもおかしくなかったなぁと思うんですが(実際途中までラスト曲候補にしていたはず)、当時の自分たちのモードが少し違う方向にいってたんだと思います。

そのあと2020年から2022年にかけて「Xanadu」「swing in the dark」という2枚のアルバムをつくり、サウンドの指向が少し変わったことにより曲のつくり方の意識も、選ばれる曲のテイストも自然と変わりました。
バンドが変革を求めていたし、実際に生まれ変わることができた時期でした。
この曲はずっとデモ「一軍」にはいましたが、ピュアでまっすぐなこの曲は、やはりこの間選ばれることはありませんでした。

2023年は、2020年からの変革を経て新たに手に入れた自分たちのサウンド感を持って、今一度自分たちが思う「普遍的な曲」を見つめる年になりました。
それには、林哲司さんと "BRAND NEW MEMORY" というメジャーデビュー曲をつくったことももちろん影響しているし、それが自分たちにとっての次のステップだと思いました。

そんな年の締めくくりに冬曲のリリースが決まります。
「この曲がいいのでは」と最初に声を上げてくれたのはクラウンチームでした。
ずっと選ばれなかった古いデモだったので、はじめは「え?ほんと?」という感じでしたが、
普遍性を見つめるという今年の自分たちのタイミングで、この曲をブラッシュアップしてリリースすることに、僕も大きな意味を感じました。
そして、13年目のメジャーデビューの年に「またここから始まる」ワクワクを込めたこのタイトルもピッタリじゃないか!と。

8月下旬に曲が決まり、レコーディングは9月中旬。
この曲のブラッシュアップは、繊細で難しい作業でした。
歌詞については前述のとおり、ほとんど当時のデモのまま完成となりました。
一度書き直しチャレンジをしてみましたが、元々の詞が持っている気持ちのまっすぐさには敵いませんでした。
アレンジは、「YOU」という大元の着想に山下達郎「The Theme of Big Wave」をブレンドするイメージでデモから再構築しましたが、少しでもオーバーな着色をするとそれが妙に浮き立って見えてしまうので、メンバーそれぞれのパートやシンセも含めとにかく香り立つ背景に徹しました。
MVで某鉄道CMのオマージュをやるというアイデアが選曲の段階でも出ていたので、アレンジでも季節感をいつになく意識していました。冬を感じさせる隠し味を随所に散りばめて、とてもロマンティックな仕上がりになったと思います。
そして何より、この曲のムードを決定づけてくれたのが、TRI4TH藤田淳之介さんのアルトサックスと、清野さんのピアノです。
藤田さんにはRECスタジオに来ていただき、同じタイミングで清野さんにはオケのデータを送って宅録でピアノを入れていただきました。
藤田さんには「missing summer」のレコーディングで初めてご一緒して以来、毎回「自由に吹いてください」という丸投げオーダーをしています笑
その結果、毎回想像以上の素敵なアドリブを吹いていただいて、今回もどのテイクをOKテイクにするかという贅沢な悩みで頭を抱えました。
(藤田さんとそのあたりもゆっくりお話させていただいた僕のラジオ番組のアーカイブもあるのでぜひそちらも併せて聴いてください)

僕らの楽曲にはこの時代に珍しくフェードアウトが多いですが、フェードアウトだから表現できるストーリー展開や情緒があると思っています。
この曲も、ゲストプレーヤーおふたりの極上の絡み合いの最高潮でフェードアウトしていくところ、僕的にも超お気に入りであり聴きどころポイントのひとつだと思います。

あとサックスソロの後半に入っているコーラスは歌詞に記載してないもので、RECの一番最後に追加したパートです。
"Bright eyes
Miss your eyes"
と言っています。
僕はmissという英単語が好きですねぇ笑

長くなりましたが最後にMVのこと。
オマージュには勇気が要ります。
中途半端な気持ちでやると、ただアイデアを借りてきただけの真似事で終わってしまうからです。
だからこそ、まず楽曲そのものに愛やリスペクトを大いに込めたつもりです。
オマージュをしたいと思った理由が、音からちゃんと伝わるようにしたかった。
できたMVを観て、楽曲が映像によってより輝いて聴こえて嬉しかったです。
素敵な映像をつくってくださった吉田ハレラマ監督、出演していただいたアマイワナさんとガリちゃんこと上利青さん、ありがとうございました!
僕の出演シーン撮影は22時から。一望する夜景が本当に綺麗でした。

冬の色んなシチュエーションでこの曲が流れることをワクワクイメージしながらつくりました。
この曲がみなさんの冬をあたため、ロマンチックに煌めくことを願っています!

Recording Credit:
Words, Music by Sho Kurashina
Vocal, A.Guitar, Programmings by Sho Kurashina
E.Guitar by Takashi Yoshida
Bass, Chorus by Ayane Enmoto
Drums, Chorus, Programmings by Tsunoken

Keyboard by Yusho Kiyono
Sax by Junnosuke Fujita(TRI4TH)

Recording at STUDIO MECH
Recorded, Mixed by Fumito Nakamura
Mastered by Moe Kazama(studio Chatri)

Jacket, Logo Designed by Ayane Enmoto

皆さんのお気持ちをぜひよろしくお願いします!いただいたサポートは今後の音楽活動費とさせていただきます。