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風はパーマネント - 変わりゆくもの、変わらないもの -

2月の "satellite flying alone" 配信リリース、8月の "ふたりは夏雲 feat.miida" 配信リリースに続き、11/22に配信リリースのソロ楽曲 "風はパーマネント"。 今年はソロもたくさんの楽曲をお届けすることができました。
年末年始の空気感にもしっくり馴染む曲だと思います。

僕のボイスメモには無数のメロディーアイデアが録音されていて、ギター弾き語りのものもあれば、出先で電話するふりをしながら囁き声で鼻歌した恥ずかしいものもたくさんあります笑
この曲の元ネタはおそらく2年くらい前からあって、とにかくサビのあたまで「風はパーマネント」と言いたい、というのが最初の着想です。何だそれという感じですが…
ちょっとめんどい話になりますが、この曲のサビの入りの「パ〜マネ〜ン」のところのメロディーラインは、コードに対して長7度の音になります。
この音でパーマネントと発音したい、というのがこの曲の着想なのです。説明したことで何だそれ感が増してしまいました。
何はともあれ、このサビ入りのアイデアはあったもののそのあとのメロディー展開がイマイチしっくり来ないので、それを練るための「風はパーマネント」という名前のついたボイスメモがいくつか溜まっていました。

そうして何度もメロディーをこねくりまわしているうちに、A、Bメロが「これだ」という確信の持てるかたちになってきたので、次のソロ作品としていいかもしれないと思い、一旦デモをつくってみることにしました。

ソロ楽曲をリリースする上では、自分の中でバンド楽曲との差別化や線引きはかなり大事にしていて、
キーワードを挙げるなら「フォーキー」「チル」といった言葉で形容できるムードが鍵になっています。
これらのキーワードはバンドが目指す音楽性とは異なるものであり、パーソナルで内向的な表現をするソロにおいて相性のいい音楽性だと思っています。
当然ながらバンドでやることで輝くものはとことんバンドでやりたく、ということはソロでやることはちゃんとソロでやる意味をしっかり持っていないと自分の中で腑に落ちないので、自ずとソロ作品はそういったキーワードで形容できるようなある種コンセプチュアルなものになっています。
この曲もメロディーがフォーキーでニューミュージック的なムードだったので、落ち着いたムードに落とし込めれば次のソロ作品に相応しいものになると思いました。

夏頃、次のリリースの選曲会議がありました。1コーラスのデモトラックはできていましたがサビ後半のメロディーがまだしっくり来てなくて、会議の最後にダメ元で流してみたら思いの外スタッフチームからの評判がよかったので、本腰を入れてこの曲を仕上げることに。
全体の質感で意識していたのはこのあたりの曲たちだったと思います。

アレンジは1コーラスのデモの時点でムードが固まっていたので、それをフル尺に広げていきました。
意識していたのは淡い揺らぎ淡い煌めき。カーテン越しの陽の光が揺れているような雰囲気をシンセやエレキの音で表現できたと思います。
鍵盤では、普段RhodesやDXの音色を使うことが多いのですが今回はWurlitzerを使いました。Rhodesと並んで代表的なエレピの音ですが、自分の楽曲ではなぜか難しいといつも感じてあまり使ってこなかったんですが、今回はいい具合にハマりました。Rhodesよりも乾いた質感が、この曲の淡さにぴったりだったと思います。
アコギは最近多用しているガットギターも試したのですが、今回は普通のアコースティックギター(高校時代からの相棒Gibson J-45)を採用しました。
「ふたりは夏雲」同様、いちばん苦心したのが曲展開。Cメロまではシンプルな流れですが、そのあと通常のサビには戻らず、主人公の心情がじんわり熱を帯びていくのをラストの曲展開で表現しています。

歌詞については、とにかく「風はパーマネント」というワードが先にあったので、それってどういうことだろう?と考え紐解くことからスタートでした。
「風」というものは、自分の音楽にとってはなくてはならないとても大事なテーマです。なぜかはわからないけれど、そこに風を感じられる曲が好きだし、自分の曲も風を感じてもらえるものでありたいといつも思っています。
パーマネント=永久の。
ちなみに髪のパーマはパーマネントウェーブ=水に濡らしても永久的に崩れない髪型ということみたいです。知らなかった!この曲とは無関係です。笑
「風はパーマネント」つまり風が永久的なものであるということ。響きから生まれたキーワードでしたが、同時に「確かにそうだな」と実感できる言葉でもありました。
例えば僕がいま住んでる家には前は別の人が住んでいて、でも窓の外はきっと同じ景色で、同じ季節には同じような風がそこに吹いていたはずです。
さらには僕が死んだあとも、この世界には変わらない日常があって、淡々と繰り返されていく。
それはある意味では冷酷なことでもあり、救いでもあると思いました。
自分が落ち込んでいたとき、そこに変わらない風が吹いていることは、またきっといつもの日常に戻れるという救いにもなり得る気がしたんです。
出会いや別れの中で、様々な心のグラデーションを繰り返す我々の日常には、いつも変わらずそこに風が吹いている。
それがこの曲の根幹テーマです。

同時にこの曲は、「ふたりは夏雲」の続編とも捉えられるかなと思っています。
誰かへの特別な思いは、グラデーションして曖昧な色になってもずっと特別なままシミのように残っていたりする。
そういう心の中の「パーマネント」も次第に浮かび上がってくるような、そんな歌になったかなと思います。

この曲についての話、僕が10代からお世話になっている音楽ライター内本順一さんにインタビューしていただいた記事もあるので、併せてぜひ一度読んでみてください!

ジャケットは前回に続き僕が撮影した写真です。
たしか代々木上原あたりを散歩しているときに撮った気が。
影の濃淡が、「変わりゆくものと変わらないもの」というこの曲のテーマとリンクする気がしました。

そしてMV。
瀬能啓太くんは、バンド作品(7inchのデザイン)でお力添えいただいたことはありましたが今回初対面。

本当に素敵な映像をつくっていただきました…!
「日常」を映し出すことをテーマに、まさか僕の自作ルアーも登場することになるとは。笑
どのシーンもお気に入りです。ぜひあらためてご覧いただけたらと思います。実際に淹れた珈琲も美味しかった!

撮影の合間でアー写まで撮ってもらっちゃいました。こちらも本当にお気に入りです。

2024年も、ソロは自分の心の機微を映し出すことを何より大切に、自分らしいかたちで作品をつくっていけたらと思っています。

p.s.年末年始ということで、この曲とともにみなさんにホッとひと息ついていただくイメージでプレイリストもつくってみました。ぜひお楽しみください!

Credit:
Words & Music by Sho Kurashina
All Instruments, Vocal, Chorus, Mixed by Sho Kurashina
Mastered by Moe Kazama(studio Chatri)
Label : DOBEATU
Promotion : Music Asset Directors Inc.
Ⓟ 2023 DOBEATU distributed by diskunion

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