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スタート

今日は、大学生の息子が、1年間、
続けたアルバイト先の最後の出勤日。

勤めた先は、都内のバー。

バー、と聞くと、かっこいいけれど。

人手が足りない時は、妖しい店(本人談)にも派遣されるようだった。

私は黙って見ていた。
何も言わず。
まったく何も言わず。

というのも。

そのアルバイトが、
彼の人生の大きな第一歩、になって
いる、
というのが、わかっていたから。

コロナに入ってから。

息子は、
それまで苦しかったこと、
悲しかったこと
を、私に、両親への反発も含めて、
私にぶつけてきた。

私は、それを、真正面から受けた。
ふりかかってきたのは、完全に
吐瀉物だった。

三日三晩、連続で、朝まで、話を
聴き続けたこともある。

これは、小説か、はたまた、映画か、
のような場面も、何度もあった。
目の前で繰り広げられている事が
現実とは思えなかった。
いや、思いたくなかった。

そこを、彼は、苦しみながらも
抜けようと、もがいてきた。

その一つが、親からの「経済的自立」
だったのだった。

私は、毎朝、彼の靴を磨き、
制服代わりのスーツを天日干しし、

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