諸外国と日本のプログラミング教育を比較する


【諸外国のプログラミング教育について】


2020年4月より日本でも遂にプログラミング教育が必修化されました。しかしながら、文科省のガイドラインがまだ明確に定められていない、地域ごとのICT環境の整備状況に格差があること、また、コロナ禍で学業の遅れが生じてしまっていることはすでに公開したnoteにてお話した通りです。

そこで、すでにプログラミング教育を実行している諸外国のプログラミング教育事情を調査し、日本のプログラミング教育と比較してみましょう。

文部科学省が発表した諸外国におけるプログラミング教育に関する調査研究(https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/detail/1408119.htm)の内容を表にして一覧化すると、以下のようになります。

画像2

特にプログラミング教育が進んでいると思われるのが英国です。低学年の内からアルゴリズムについての教育に注力し、概念を学習することに対して力を入れています。

また、「Skype」が開発されたICT大国であるエストニアは小学校1年生からアプリの開発を学ぶ「Proge tiiger」というカリキュラムを履修します。「Proge tiiger」では7歳~18歳までを対象にすべての公立学校でのプログラミング授業を選択できるようにすることが目標とされており、教員の育成や機材の提供が行われています。

ICT先進国であるインドでは、小学生の低学年からプログラミングのカリキュラムが盛り込まれています。LOGOを使い始めるのも低学年で、諸外国と比較してレベルの高いプログラミング教育が行われています。

アジア諸国では主に中学校や高校からプログラミング教育を実施しているようです。韓国ではカリキュラムの見直しが頻繁に行われ、変化の激しいIT環境の中でより現実に則した教育が期待できます。

アメリカでは前大統領であるオバマ氏の時代からSTEM教育に注力しています。STEMとはScience、Technology、Engineering、Mathematicsを意味し、理系の総合的な教育は諸外国と大きく差をつけています。「Code.org」で無料の子供向けプログラミング教育を行っている点も日本にはない点です。

国際的に名を馳せているICT企業であるノキアやLinuxなどの出身国であるフィンランドは、実はプログラミング教育を開始したのは遅めです。内容はゲームを算数の一部に加えたり、ビジュアルプログラミングを使用してプログラミングに触れるなど日本のプログラミング教育に近しいものがあります。

また、上記の図に記載はありませんが、オーストラリアでは実は幼稚園から「Digital Technology」というカリキュラムを履修しています。幼稚園児のころからプログラミングに触れ、小学生以降ではプログラミングを学びロボットを使った実験なども行います。早期教育という意味では諸外国との違いは歴然です。

【日本におけるプログラミング教育】


文部科学省の公開している小学校プログラミング教育指導案(https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/detail/mext_1421730.html)によると、「プログラミングの授業」という枠を設置するのではなく算数や理科、クラブ活動などを通してプログラミングに触れていくのが現状の目標のようです。同省が公開しているyoutube動画(https://www.youtube.com/watch?list=PLGpGsGZ3lmbDT1aiatXSOfKexgsjfzJ1F&time_continue=481&v=_fW3iB_1XgM&feature=emb_title)でははっきりと、「児童が言語や技能を取得したりするといったことは考えられますがそれ自体を狙いとしているのではありません」と発言しています。

他にも、論理的思考を養うだけでなく情報活用能力の育成を狙いとしており、情報資産を適切に活用する「情報モラル」の教育も行うとしています。英国での情報モラルの教育と、エストニアでの「Proge tiiger」プログラム、更に米国の「Code.org」のような無償公開のプログラミング言語教育ソフト「スクラッチ」などを活用する指導案は、ICT先進国である諸外国を参考にしつつ工夫を凝らしているようにも見受けられます。

【比較結果まとめ】

諸外国のプログラミング教育の中からより現行の義務教育に則した内容のプログラミング指導案を実施しようとしている日本。しかしながら、以前公開したnoteにもあるように、地域ごとの教育格差は存在していますしコロナ禍で更に家庭学習の比重が増え、地域だけでなく家庭ごとの教育格差も広がっていくと想定されます。

素晴らしい指導案を用意しても、実施されなければ意味がありません。子どもたちが格差を感じることなく、かつ、ウィルスなどの脅威にさらされることなく安全に学べる環境を作っていくのが、私たち大人の責任ではないでしょうか。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?