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【旅行記】微魔女の微ミョーな旅・1

はじめに

 私は微魔女。前世紀、しかも昭和生まれの54歳。
 後半20年は、オーストラリアでトシを重ねた。ほんとうに重ねただけ。
 
 そして7年前の50歳になった年に、20~30代の頃の趣味だった海外旅行を再開しようと突然決心した。
 幸い、夫は寛容な人なので、パートで貯めたお金を全額自分の趣味に注ぎ込んでも文句を言わない。留守番も、高一の息子と猫2匹の世話もろとも快諾してくれる。反対したところで、私が出掛けてしまうのを承知しているからだろう。 
 
 私が大学生の頃、格安航空券が世の中に出始めた。バブル景気で海外旅行がぐっと手軽になったため、みんながみんな卒業旅行と称して遥かアメリカやヨーロッパを目指した。農協の団体ツアーの微魔女たちが、パリのシャンゼリゼに並ぶ高級店で顰蹙を買っていたのと同じように、女子大生もまたシャンゼリゼでやりたい放題をして失笑を買っていた。一昔前、銀座に観光バスで乗り付けていた某国観光客のようなものだ。
 一方で、いかに安くヨーロッパへ行ってきたか、いかに安く世界一周をしてきたかというのも、トレンドのひとつだった。バックパックに穴の開いたジーンズ(でもリーバイス)、汚れたスニーカー(でもナイキ)、日焼けした顔に無精ひげを生やしてピースサイン(日本人しかやらない)。バンコク経由、カラチ経由、偽航空券、空港職員とケンカ……などが、“自称”貧乏旅行談に泊を付けていた。
 本当に貧乏なら、のんきに旅行なんか行ってられないっていうのにね。
 
 私は語学が苦手だし、アルバイトで旅費稼ぎをするほどのパッションもなかったので、普通に旅行をしていた。パッケージツアーであったり、中抜きツアーであったり、個人であったり……と特にこだわりもなかった。そして、50歳にして海外旅行を再開するにあたっては(オーストラリア在住なので、日本へ帰るのも立派な海外旅行なのだが)、現地発着ツアーを利用するようになった。なぜか? 私が行きたい国は英語が通じないところが多く、オーストラリアは現地発着ツアーが主流だからだ(ちなみに、オーストラリア発着の完全パッケージツアーは、いわゆる裕福なご隠居さん夫婦仕様なので旅程も費用も一桁違ってくる)。
 そんな話を友達にすると、
 「現地語も話せない国に行っても意味ないじゃん」
 との感想が返ってきた。現地語をマスターしてから行きたい国に行っていたら、一生かかっても世界中をまわり切れない。そういう友達は英語は達者だが、ほとんど旅行などしたことがない。
 「もちろん現地語が話せたらコミュニケーションができるから、いろんなことがわかって面白いと思うよ。でも、私は調査研究しに行くわけじゃないから、自分の及ぶ範囲で見て、感じて、経験できればそれでいいと思うし、それが旅行だと思う」
 その代わり、私は友達よりもいろんな国の“こんにちは”と“ありがとう”の言葉を知っている。今更言葉なんて覚えられないが、この二語だけは、訪れた国への敬意を表して、また訪れた証に記憶することにしているのだ。
 というわけで、人生半ばにして再開した微魔女世代の海外旅行。旅行初心者でも上級者でもない、“微ミョーな立ち位置”で、行って・見て・感じた体験をご紹介したいと思う。
 

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