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季語六角成分図「山眠る」

俳句ポスト 第269回 2021年12月20日週の兼題。

季語六角成分図「山眠る」より。
(視覚)雪をかぶった白く輝く山、草木が枯れて蕭条とした山。具体的な山名を充てることも。晴れているor雪雲で曇っている空(雪が舞っていたとしても、吹雪いてはいない)。雪、枯草、枯木、凍った川・湖・滝、寒禽、鶴、雁など。
(嗅覚)ほぼなし。
(聴覚)静寂(胸が痛くなるほどのしじま)。雪の落ちる音、寒鴉、凩。
(触覚)冷気、乾き、さらさらの雪。
(味覚)なし。
(連想力)眠り=死、活動量の低下、ゆりかご、休息を取りまた動き出す。何かを抱き、埋め、隠している。冬眠(熊、リス、ヤマネ…)、猟など人の営み、金属。

★冬の山の静まり返ったさま。視覚、聴覚、連想力の順に強い。郭煕の画論「冬山惨淡として眠るが如し」に由来するとされる。他の季節にも「山笑ふ(春)」「山滴る(夏)」「山装う(秋)」の表現がある。
★作句の最大のポイントは一句の中で擬人化をどう位置付けるか、という点か。「冬の山」との違いを考えてみると以下のような印象の違いを感じます。
「冬の山」:名詞=即物的、孤高の自然、厳しく動かざるもの。
「山眠る」:動詞=観念的、人の営みに寄り添う、穏やかに息づいているもの。
★実は俳句ポスト2015年11月12日の週の既出の兼題である。天選「山眠る熊胆闇色に干され 牛後」や地選「蜂蜜に沈む知恵の輪山眠る 岩魚」などの佳句があり、これに挑めというのか…組長は鬼や…(白目)となった(見なきゃ良かった)。
★山がどこで、どう眠っているか、その眠りは深いか浅いか、など一物仕立てもしくはそれに近い句は、やりつくされている感がある。「眠る山薄目して蛾を生みつげり 堀口星眠」や「ひとかどの女の如し山眠る 守屋明俊」などが面白い。あえて一物仕立てに挑戦するのも、これぞという取り合わせを探すのもいい。発表週がとても楽しみな兼題です!

季語六角成分図に関する注意事項


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