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季語六角成分図「花野」

俳句ポスト 第265回 2021年8月20日週の兼題。

季語六角成分図「花野」より。
(視覚)広々とした一面の野、澄んだ青空、淡い日ざし。秋の七草をはじめ、吾亦紅、野菊、曼珠沙華、水引、露草、赤のまんまなど慎ましさがあり、風に揺れる花々(丈の高いものが多い印象)。細い路・径、背景の山、森、海。行き交う人、花を摘む人。
(嗅覚)乾いた草や、露に湿った土の匂い。花自体の匂いはほぼない。
(聴覚)昼の虫の音、秋風、葉ずれ。
(触覚)草の葉の鋭さ、薄さ、乾いた感触。花びらの柔らかさ、細さ。涼やかな風。
(味覚)なし。
(連想力)奈良・平安時代の前栽。嵯峨野。遥けさ、果てしのなさ。いずれ枯野となる寂しさ、侘しさ。人の生死。

★春の花樹に対し、秋の草花を賞する季語。本意は「広々とした秋晴の下、秋の千草が咲き乱れる一面の自然の野」であり、華やかさと寂しさをあわせ持つところがポイント。野菊や秋の七草など主役級の花々を包含した懐の深い季語という印象です。なお、夜や雨・曇りの日の花野は、そうわかるように描写する必要があるでしょう。
★奈良・平安時代より盛んに和歌の題材とされたが、花野という歌言葉が現れるのは鎌倉時代以後とのこと。「村雨のはるる日影に秋草の花野のつゆやそめてほすらむ」大江貞重。
★似た季語として秋の野や花畑(いずれも三秋・地理)があります。秋の野はより伝統的な歌言葉ですが、花野の方がより草花に意識が向いています。花畑は人の手で整えられたものなのでかなり趣が違います。
★句友さんが、「眠る・睡る」や「骸」は類想ワードではないかとTwitterでおっしゃっていて、私も同じ意見です。他に、「隠す・潜む」「果て」「花を摘む(人)」「(花野の中の)路・径」辺りも類想ワードっぽい。これを出発点にどんなオリジナリティを加えていけるでしょうか…。

季語六角成分図に関する注意事項


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