ケルト音楽を踊る(序)

4月14日、日曜日。19時15分に学校の前に集合しミュージックホールに向かう。ケルト音楽を鑑賞するイベントだ。

先日の美術館に比べて多くの生徒が集まった。ドイツ人のニスィ、コロンビア人のカタリーナ、カミーラ、ニコラ、ブラジル人のモアナとその母親、そして、ラトビア人のサンドラ。全員女性だった。サンドラは僕より一週遅く入学した上級クラスの女性だ。茶色い髪に程よく焼けた肌、水色の瞳、身長も僕より少し低い程度のがっちりした、同時に女らしさも持ち合わせる妖艶な人だった。これまで身近に彼女ほど青く澄んだ瞳を持つ人と話したことがなかったため、目を見て話していると次第にその一対の瞳以外の全てが見えなくなってしまいそうだった。彼女ほど妖艶という言葉を体現した女性はそういない。

ケルト音楽とは何か。ホールに着いてもその建物からはまだ想像できなかった。僕らはメインホールの奥にあるバーで待機することになった。

「ケルト音楽を踊ったことがある人はいるかしら?」

大きな目を最大に開きながらニコラは言った。イベントには必ず1人付き添いの講師がつく。ニコラはいつでも出会いを楽しんでいるように見える。

「ないわ。あのスカートを履くやつでしょ?」カミーラはいつでも積極的に発言をする。

「ええ。あれはスコットランドの伝統衣装なの。おかしいわよね。でもダンス自体は簡単よ。誰でもできるようになってるから。ねえ、誰かアルコールはいらない?」

「私はもらうわ」ブラジル人のモアナが言った。モアナは1週目の午後の授業で黒人ばかりの授業に1人ブロンドの白人という絶対的な存在感を放っていた人物だ。彼女がビールを注文するのはごく自然に思えた。彼女がビールなしで踊るわけがない。

踊る?

「もしかして私たちも踊るの?」

「ええ、そうよ。ワインでも飲みながら踊る方がきっと楽しいわ」ニコラがいつの間にかワイングラスを持っていた。

「今日は舞台の演奏を見るだけだと思っていたわ」

「僕もそう思ってた」僕はサンドラに賛成した。定期的に発言する必要がある。

メインホールのドアが開いた。僕らの他にも一般客がぞろぞろと入っていった。