1人の時間を求めてしまう

リアル脱出ゲームが終わるとラジェシは面倒な用事を一つ片付けた後のようにそそくさと去っていった。

ジュジーの提案でアレシアとアブスとユニオンスクエアでコーヒーを飲むことになった。ユニオンスクエアの二階奥にあるスターバックスに入った。僕は一般のカプチーノを頼んだ。ジュジーはお菓子を買ってみんなに僕らに食べていいよと言った。

僕は三人の会話を途切らせたくなかったためあまり発言はしなかった。時々アブスの方を見て簡単な英語を言った。このころになると相手が誰であれ確実に伝わる構文が定まってくる。can I ask your question? イギリス人にはこれが挨拶の一つとして、たとえ最後のquestionしか聞き取れまいがその構文全体を予測することができる。それは僕の発音がいいのではなく特徴的で間違えようのない、一つの音として誰もが認識しているものだ。

アレシアは気になっている男性の話をした。僕はアレシアに好感を抱いていたが、彼女にそのような人物がいることに嫉妬は微塵も感じなかった。アレシアはそのイタリア人男性に恋愛感情があることを認めたくないようだった。しかし好きな男の話をする女性の顔は万国共通だと思った。アレシアにアタックされる男性の気持ちは分かりそうにない。

アブスはどうなの?とアレシアが聞いた。アブスは彼女がいるかいないかをはっきりさせずにアレシアやジュジーの質問を受け流していた。外国人と恋愛の話をするのは初めてだが、その瞬間だけみんな子供のようになるのが面白かった。

僕たちはユニオンスクエアを出たところで解散した。1人になれたことが嬉しかった。ヘッドホンを付けて好きな音楽を聴けることがこんなにも楽しいということを毎回友人と遊ぶたびに思う。ジュジー、アブス、アレシアは僕にとって心を許した心強い存在であるのに、僕の本心は1人の時間を求めていることをいつも独り帰路で気づかされるのだ。