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「あの人」の亡霊

創作と学びと遊びの日々を過ごす中…

時々、「あの人」のコトを思い出す瞬間がありました。それも、頭の中にイメージとして浮かんでくるのです。

どれも決まって「悲しそうな表情」をしていました。

「私、また相手を間違えちゃった…」

「結婚って、思ってたのと全然違ってました」

「幸せだったのは結婚式の日まで。あとは、大変なコトばかり…」

頭の中のあの人は、いつもそのようなセリフばかり伝えてくるのです。


さすがのヘイヨーさんでも、それが妄想だというコトはよくわかっていました。でも、アレだけ長い時間を一緒に過ごした仲なのです。

「もしかしたら、これは『あの人が発しているSOSのサイン』なのかも知れないな…」とも考えました。

そのたびに携帯電話を握りしめ、連絡しようかどうか迷いましたが、結局、発信ボタンを押すことはありませんでした。

だって、あの人は結婚してしまったのです。人の奥さんになったのです。自分のコトは自分で解決するしかないし、それが自ら選択した道の代償というモノなのですから…

それに、まかり間違って、以前のように仲良くなってしまったら、それこそ最悪でしょ?

結婚して家族もいるのに、他の男と『2人だけの世界』を形成し、夫や子供以上に仲良くなってしまったら、そっちの方が問題だと考えたのです。

なので、最後までヘイヨーさんの方から連絡することはありませんでした。


その後も、何度かあの人の夢を見ました。

よくあるのは「あの人が、ひとりで後悔している夢」

もう1つは「母親と一緒に訪ねてくる夢」でした。なぜだかわからないけれど、あの人が母親と一緒にやって来るのです。母親が「この子と仲良くしてやってくださいね♪」と言って。

「おかしな夢だな…」と、ヘイヨーさんは思いました。最初は、あまり気にしませんでした。でも、何度も何度も似たような夢を見るので、「この夢にも何か意味があるのだろうな」と考えるようになりました。


1度だけ、父親の夢も見ました。

あの人のお父さんが「どうか娘に連絡してやってください」と頼んできたのです。もしかしたら、よほどのピンチだったのかも知れません。たとえば、仕事と家庭の板挟みになって、精神的に参ってしまったとか。あるいは、病気になって入院したとか?

でも、この時も、ヘイヨーさんは無視しつけました。だって、あの人は「自分の意志で結婚してしまった」のですから。幸せも不幸も全部全部、自分で背負い込む責任があるのです。それが、あの人に課せられた「罪」であり、与えられた「罰」でした。


ところが、ある日、夢は現実のものとなります。

娘は、母親と一緒にやって来たのです。

noteの世界で輝いている才能ある人たちや一生懸命努力している人たちに再分配します。