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代償行動 ~理想が手に入らないなら代わりのモノで我慢しよう!~

青年の中学時代の同級生に竹ちゃんというのがいました。男子校だったので、もちろん男の子です。中学の時には、そこまで仲がよかったわけではないのですが、仲良しグループのひとりではありました。

その竹ちゃんが一浪して大学に進学し、三鷹の近くに住んでいます。

実は「世界を変える戦い」の日々に青年の家を訪れたこともあり、あの人とも顔を合わせていました。

時間にゆとりができた青年は、ちょいちょい竹ちゃんと電話で話したり、一緒に行動するようになります。

相変わらず「そこまで仲がいい」という気はしなかったのですが、竹ちゃんの方からなにかと連絡をくれたり、いろいろなイベントに誘ってくれたりしたので、青年としても断ることができず、なんとなくつるむようになっていたのです。

あとから考えると「代償行動」の一種だったのではないかと思います。

「代償行動」
理想とするものが手に入らない時に、似たようなものを代わりにして満足する行為。防衛機能の一種とされる。

たとえば、好きな人とつき合うことができないので、身近にいる他の人で満足する。
恋愛がうまくいかないので、仕事に没頭する。
学校の勉強がわからないので、ゲームを上達させ得意になる。などなど。
「過食症」「買い物依存症」なども代償行動の1つと言われている。

あの人と恋人になれなかったから、気軽に接してくれた友人の竹ちゃんと一緒に居ただけだったのでは?

その証拠に、竹ちゃんと行動を共にしながら、いつも青年はあの人のコトを考えていました。

「ああ~あ。横にいるのがあの人であればよかったのに。そうすれば、もっと幸せだったに違いない」

竹ちゃんと一緒にいれば、それなりに楽しい時間を過ごせました。けれども、心の底に空いた穴は決して埋まりません。むしろ、穴はどんどん大きくなり、穴からもれ出した闇は濃く広がっていきます。

「もしかしたら、あの人も同じ思いでいるのではないだろうか?」

そんな風に考える時さえありました。


考えてみると、あの人が浜田君を選んだのだって、最初は代償行動だったのでは?

青年が「世界を変える戦い」にかまけてばかりいて自分の方を向いてくれなかったから、代わりにすぐ側にいてやさしくしてくれた浜田君を選んでしまったのでは?

「魔が差した」とでも言えばいいのでしょうか?一時の気の迷いというのは誰にでもあるものです。でも、時間が経てば経つほど、間違った相手を選んだ後悔は大きくなっていきます。

もしも、あの人がそのコトに気づいているなら、今頃、後悔しているはずです。

口では「大丈夫。私は幸せですから♪心配しないでください!」と言っていましたが、それだって本心かどうかはわかりません。もしかしたら、自分で自分を納得させるためにそう言っているだけかもしれません。「自らが選んだ選択が過ちであった」と認めたくないがために!

あの人には、そういうところがありました。


たとえば、青年が電話であの人と話した時にこんなコトがありました。

「浜田君って、私と一緒にいる時にもずっと居眠りしてるのよ!失礼だと思わない?だから、私、怒ったんです」

「そういえば…」と青年は思いました。竹ちゃんも青年と一緒にいる時、よく居眠りしていました。

「失礼な奴だな…」と思いましたが、口には出しませんでしたけどね。

「あの人と浜田君」「青年と竹ちゃん」

恋人と友人という違いはあれども、2組の関係は非常に似通っていました。もしも、青年の予測が当たっており、これらが代償行動であれば、そっくりだというコトになります。

…かといって、何かが変わるわけでもありません。もしかしたら、あの人は浜田君とつき合い始めたことを後悔しているのかもしれませんが、その一方で「もう、こうなっちゃったんだからしょうがないじゃないの!あと戻りはできないのよ!」という心理になっていたのでしょう。

たとえば、本来自分が行きたかったわけでもない学校に入学したり、不本意な就職をした企業でも、途中で辞めることなんてそうそうできるわけではありません。

「とりあえず卒業するまでは学校に通おう!」「3年くらいは、この企業で勤め続けよう!」

そんな心理が人間には働くものです。

だから、心の中では「もしかしたら、間違った選択をしたかも…」と思いつつも、軌道修正できないまま関係は続いていくのでした。


それから、こんなコトもありました。

中野区のボランティアで「カウンセラー講座」というのが月に1度開かれていて、中野区のメンバー数人の他に青年も呼ばれて欠かさず参加していました。あの人と浜田君もいます。

この頃になると、あの人と浜田君はケンカばかりするようになっていました。血みどろ事件の時に青年に電話で向かった時のような怒り方ではありません。本気で怒っているのです。

そりゃ、そうです。元々相性がよくないのに、青年が運命をねじ曲げて無理やりつき合うようになっただけだったのですから。こうなるのは当然です。

まして、自分の恋人が理想の人ではないとわかった瞬間から、外部に「理想の人」を作り始める人です。

言っちゃ悪いけど、浜田君って世間的に見ればそんなにたいした人物ではあなかったんです。学業やバイトに一生懸命で、ちょっと優秀な部類に過ぎません。ボランティアも手を抜くし、「自分の利益最優先」で、みんなのためとか世界平和のために戦える人ではありませんでした。

むしろ、みんなのために生きていたのは青年の方だったのです。でも、結果的にその行動があの人を失い、自分勝手に行動した浜田君の方が彼女を手に入れてしまいました。

ここに矛盾が生じていたんです。「理想としている人」「現実につき合っている人」が別の人間。

それに、彼女が理想とするような博愛主義者は、身近な幸せに目もくれないので、寂しさを感じてしまうのでした。

noteの世界で輝いている才能ある人たちや一生懸命努力している人たちに再分配します。