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チガサキ君の暴走。美嘉ちゃんの失望

チガサキ君ってのを覚えてます?

美嘉ちゃんの彼氏で、自身も役者をやってる男の子。彼のおかげで、青年もアングラ劇団と縁ができて、新しい物語をまた1つ生み出すことができました。

そのチガサキ君。背は低いのですが、見た目は結構かっこよくて、自信家で、モテる要素満載なんですよ。ただ、これまで女の子と縁がなくて、なかなか女性とおつき合いする機会がなかっただけで。

それが、美嘉ちゃんとつき合い始めたことで、「モテの潜在能力」みたいなモノが開花してしまいます。そうして、美嘉ちゃんを切り捨てると、自分勝手横暴に振る舞い始めます。

知り合いのいろんな女の子とデートしてみたり、女子校の文化祭を訪れては新たなターゲットを物色して見たり。

ま、実際どこまでのプレイボーイであったのかはわかんないですけどね。この物語の作者もおおげさなところがあるので。ただ、恋人だった美嘉ちゃんを捨てて、他の女の子たちのもとへと走って行き、一緒に楽しく遊んでいたことだけは間違いありません。


そうなると、ショックを受けるのは美嘉ちゃんです。

ちょうどその頃、青年とは全然関係ない舞台に立っていたのですが、恋人にフラれたショックでまともに演技に身が入りません。いつもは元気ハツラツなのに、何を言っているのかわからないほど小さな声でしかセリフも言えていませんでした。もちろん観客には聞き取れません。

青年はそういうのが許せませんでした。「マスター・オブ・ザ・ゲーム」の能力を持っていることもあり、「任務遂行」は絶対なんです!プライベートでどんな出来事があろうとも、舞台は舞台!自分の役は最後まで演じ切らないと!

「ミッション(任務)とプライベート(個人的事情)は切り離して考えるべき!むしろ、人としてつらいことがあればあるほど、作家や役者は能力を高めることができる!」

そういう考え方。

青年はこういうとこ、厳し過ぎるほど厳しかったんです。創作や芸の世界となると、鬼にもなれば悪魔にもなる。

まさに「伝説の悪魔」そのものだったんです!


「これは役者として芽がないな…」と青年は思いました。

美嘉ちゃんが伝説の魔女ランシーヌになれなかったのには、そういうとこにも理由があったのかもしれません。ランシーヌの候補の1人に上がりながら、最後までそうなりきれなかった。その理由が…

ランシーヌのイメージ像は、伝説の悪魔と呼ばれたマディリスに匹敵する能力と意識の高さを持った者。互角に渡り合えないとならないんです。むしろ、潜在能力では超えるくらいでないと!


役者としての魅力が激減した瞬間、人としての魅力も薄れていきます。

美嘉ちゃんはチガサキ君を追いかけて、実家の茅ヶ崎まで追いかけていくことに決めました。その際、「一緒についてきて欲しい」と頼まれましたが、青年は断りました。

代わりについていったのは、以前に隣の部屋に住んでいたケン兄貴です。ケン兄貴は、そういうやさしいとこがあったんです。面倒見がいいと言うのか…まさに兄貴分!

逆を言えば、「目の前の感情に揺れやすい」とも表現できます。青年は逆でした。目の前の感情を見ず、「その人が心の底に持っている資質」「深層心理」を読むのが得意なタイプ。

だから、恋愛ベタだったんですね。だって、そうでしょう?恋愛って目の前の感情を大切にする行為ですから。

青年が大切にしたのは「その人の未来」そして「潜在能力」なんです。人の心の底に眠る資質を的確に見極め、「こっちの方向に進むといいよ」と導いてあげる。そういう役割。そのためには、目の前の感情に揺られてはいけない。

いつもそうだったんです。人だけではなく世界を見る時も。

「世界の行く末は?」「このままの流れで行けば、どっちの方向に進んでいく?」「時代は何を求めている?」

最初に数千年とか数百年先の遥か未来の世界を想像し、そこから段々と現代に思考を近づけていく。そうして、最終的に「現時点でどの道を選択するべきか?」を決断しているのです。

それこそが「ディケンズの分解メス」の正体でした。かなりメンドクサイ能力であり、膨大な情報量とエネルギーを必要とします。それゆえに、フツーの人よりも正確な判断ができたのですが…

noteの世界で輝いている才能ある人たちや一生懸命努力している人たちに再分配します。