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「物語は書き変わる」そして「運命の歯車が逆転する日」

本来あったストーリーに従えば、「伝説の悪魔は封印されなければならなかった」んです。

けれども、青年はそれとは別の道を選んでしまいました。ボランティアに戻ってしまったんです。

3月の31日、「もう毎週木曜日の母子寮のボランティアに行く気はない」と告げた時、あの人は最後まで食い下がってきました。「それはダメ!やめるのをやめて欲しい!続けて欲しい!」と。

でも、青年はその願いをむげに断ってしまいました。あの時は、何もかもが嫌になってしまっていたから。

ところが、そのあと急に寂しくなってしまいます。あの人が去ってしまって、心の底にあいた穴を直視してしまったせいで。

その後、何かの際にあの人と電話で話す機会がありました。

「あなたが来なかったので、みんな寂しがっていますよ。『もう来ないの?』『どうして来なくなっちゃったの?』って、心配してましたよ」と、彼女は言いました。

「みんな…?『私が』ではなくて?」と、青年は心の中で思いましたが口にはしませんでした。

それに、青年がボランティアに行かなくなった理由は彼女自身にあるのです。自分は他の男とつき合ってるくせに、ボランティア要因としてはいて欲しい。そんな都合のいい状況に耐えられる自信は青年にはありませんでした。

あの人は青年と浜田君を同一視している部分がありました。恋人としてつき合ったあとも、浜田君はボランティアでも一生懸命にがんばって活躍してくれると思っていたのでしょう。青年と同じように!

でも、おそらくそれは無理です。アレだけのこと、命を削らないとできないんです。人生全てを捧げないと不可能なんです。浜田君にはそれだけの能力もなければ覚悟もないでしょう。

だから、時間が経てば経つほど「青年と浜田君は別の人間だったのだ」と気づく確率は上がっていくはず。最終的には「ああ…私は、相手を間違えたんだわ!」と後悔する時が来る。そのはずでした。

でも、それには距離を置く必要があった。一旦、会わない時間を作る必要があった。つまり、伝説の悪魔は壺の中に封印されなければならなかったんです!

なのに、青年は母子寮のボランティアに舞い戻ってしまいます。一時の気まぐれか?あるいは「自分で物語の行く末を見守りたくなったから」かも?

でも、この時の青年は知りませんでした。「物語」も「予知した未来」も、自分で確認した瞬間に変わり始めてしまうのです。まるで、量子力学みたいに。

まして、干渉してしまったら、確実に未来は変わります。それも、思ってもみなかった方向に!この時の青年は「自らが予測した未来」「想像した物語」に直接干渉してしまっていたのです!

たとえるなら、自分で書いた脚本に自分で出演しているようなもの。それも、重要な役柄。メインキャストとして!

このコトが事態を余計にややこしくしました。「ストーリーを紡ぎ出すだけ」もしくは「役を演じるだけ」なら、わかりやすかったんです。

ところが、両方やってしまうと、お互いに干渉し合い、ストーリーは書き変わってしまう。そのたびに演じる役者も別の演技をしなければなくなってしまう。それは「とんでもなく大きなエネルギー」「膨大な情報処理能力」を必要としました。

おかげで、青年はヘトヘトに疲れ果ててしまいます。疲れ果てながらも、なお新しい物語を紡ぎ出し、同時に役を演じ続けました。それくらい、あの人に対する想いが強かったからです!それなくして、この役割を続けることはできなかったでしょう…


いずれにしろ、運命の歯車は逆転を開始します。

これまでは、まだどこかで「あの人の方が青年を追いかけている部分」がありました。形の上ではそうではなくても、心の底から尊敬し慕っていたのはあの人の方だったんです!

毎週木曜日の母子寮のボランティアに舞い戻りさえしなければ、その関係は完成したでしょう。きっと、彼女は相手を間違えたことを後悔し、青年に戻って来てくれるようにずっと願い続けたはず。

でも、青年の安易な行動により、彼女にこう思わせてしまうようになります。

「ああ、この人は私を追いかけてくれるんだ!私のコトを好きだから、私の願いなら何でも聞いてくれるんだわ!」と。

それは青年のやさしさを再認識させることになりましたが、同時に「私の思い通りになる人なんだ。この人は利用できる!」と無意識下に刻み込むことにもなってしまいました。

これって、何かに似てません?この関係、この物語のどこかで見たことがありませんか?

noteの世界で輝いている才能ある人たちや一生懸命努力している人たちに再分配します。