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世界を滅ぼし、創造し、変革する能力

『僕の改革 世界の改革』は、伝説の悪魔の物語でした。

絶対無敵の能力を持ち、戦闘で負けることはあり得ない存在でも、やはり心は傷つくのです。むしろ、並の人間より傷つきやすいくらいだったかも…

相手のコトを信じていればいるほど、裏切られたり、理想と違っていたと失望した時の反動もまた大きいもの。

かつて、世界中の何もかもを忌み嫌い、世界そのものを敵にした者が、1人の女性に恋をして裏切られた。その時の傷は計り知れないほど大きかったのです。

一生癒えることのないかに思えた心の傷。いわばトラウマは、1つの世界を創造し、自分の心の弱さを追い出して旅させることで、どうにかこうにか折り合いをつけることに成功しました。

それにより、伝説の悪魔はさらに完全な存在へと近づきます。ただ単に戦闘能力が高いというだけではなく、非常に特殊な能力を身につけてしまったのでした。

皮肉な話ではありますが、「世界を滅ぼす力を持つ者」は、この時に「世界を創造する能力」と「世界を変革する能力」を同時に手に入れたのです。

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それと共に、現実世界の「青年」も、作家としての能力を飛躍的に向上させます。

「子供でも読めるような童話的な文体で、哲学者や学者が考えるような複雑な物語を描き出す。深層心理を暴き出し、社会問題に切り込む。そのような物語を」

ついに、その領域にまで到達したのです。

「これならば『創作の神』と互角に渡り合えるかも知れない」と、青年は思いました。

けれども、この時点でその目的は成せませんでした。なぜなら、作品は最後まで完成しなかったからです!

『僕の改革 世界の改革』は、第6幕まで執筆を終え、第7幕はあらすじだけメモされたまま長い眠りにつきます。実際に、完成した姿が日の目を見るには、長い長い年月を待たねばなりませんでした。

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ここで少し『僕の改革 世界の改革』の世界構造について解説しておきましょう。

主人公の『僕』が旅した世界は、伝説の悪魔によって創造された新世界。『空想と現実の狭間の世界』と呼ばれています。

伝説の悪魔や『僕』が住んでいたのは、空想世界。様々な魔法や精霊が存在している世界です。対して『彼女』が住んでいたのは現実の世界。

この2つの間に、新しい世界を創ったんです。そこに別の世界から人々を呼び寄せた。「物語にリアリティを与えるため」に。それが、シノザキ博士や大木さん、学生服君、死にゆく詩人、その他大勢の人々です(リンに関しては、少し特殊)

伝説の悪魔も『彼女』も、空想世界と現実世界で別の姿を持っています。でも、記憶は共通。これまで、2つの世界を行き来して生活していました。そこに第3世界とでもいうべき『空想と現実の狭間の世界』が誕生したのです。

このコトにより、青年の作家としての能力は大きくアップデートされます。なぜなら、『空想と現実の狭間の世界』は、今後生まれてくるいくつもの世界の橋渡し的役割を果たすようになるからです。

簡単に言えば「プラットーホーム」ですね。無数に存在する駅の中でも「中央駅」の役割をするようになります。これにより、別の世界同士を移動する人たちが現れます。「世界を移動する」という特殊な能力を持たない者でも、別の世界に行ける可能性が生まれたのです。

ちょっと難しいお話になってきたかも知れませんが、「この世には、いくつもの世界が存在していて、別の世界に移動できる人がいる」とだけ覚えてもらえればよいかと思います。この辺りが、今後の物語でも重要になってくるので。


いずれにしても、青年が26歳の時、すでに作家としてこのレベルに到達していたということだけは確かです。

noteの世界で輝いている才能ある人たちや一生懸命努力している人たちに再分配します。