「中途半端な関係はもう嫌だから、どちらか選んで!」
毎年1度、北区の「滝野川会館」という施設で「おちゃのこ祭祭(さいさい)」というイベントが開かれていました。施設のあちこちで、お店を出したり、普段の活動報告をしたり、舞台上で演奏やダンスなどを披露するイベントです。
北区のボランティア団体のリーダー押井さんは、「バーを開こう!」と言い出します。大きなホールの一角を借りて、カクテルなどのお酒を提供するのです。
あの人は北区ボランティアに所属していたので、当然参加します。青年もお手伝いに行きました。彼女は大正時代の女性みたいなはかまをはいていて、とてもかわいらしい格好をしています。
「掃除用具を取りに行くから手伝って~」と青年が誘うと、「これだと足が痛くなっちゃうので、フツーの靴はいてもいいですか?」と言われました。
足元を見ると、歩きづらそうなゲタをはいています。
「ま、いいんじゃないの?足が痛くなってきちゃったんなら」と青年が答えると、あの人はホッと安心したように黒い革靴にはき替えました。
そういえば、この時、ちょっとおかしなコトがあったのを思い出しました!
押井さんが「ソルティ・ドッグを作るので、塩買ってきといて~」と頼んでいたので、あの人は事前に買い物に行っていたのですが…
なんと!買ってきたのは「アジシオ」だったのです!アジシオが普通のお塩じゃないって知らなかったんですね~
あの人は、そういう間の抜けたとこがありました。養命酒をお酒と間違えた時とおんなじですね。
押井さんが開いたバーは、体育館のような大きなホールの一角にあり、最前にある舞台の上では、いろいろな催し物が開かれています。
青年が目をやると、ちょうど舞台上で障害のある人たちがダンスを始めるところでした。
「みんな~!一緒に踊りましょう~」とマイクから大音量で呼びかけています。
青年はあの人に「一緒に踊ろうよ♪」と声をかけようかと思いましたが、恥ずかしくてできませんでした。
しょうがないので、舞台を眺めながら別々に踊りました。
イベントが終わると、浜田君がやって来ました。なんか「試験勉強があるから、すぐ帰る」みたいなコトを言っていたのですが、それだと一体何のためにやって来たのかよくわかりません。結局、打ち上げの飲み会に一緒に参加することになりました。
そうして、再び青年とあの人と浜田君の間で不穏な空気が流れ、ギクシャクした関係に逆戻りです。
なんだかよくわかんない関係だったんです。そして、あの人の気持ちもどっちに傾いているのかよくわかりませんでした。浜田君とはうまくいっていないようにも見えたし、青年との方が精神的つながりも強いように思えました。
でも、実際にどうだったのかはいまだによくわかりません…
*
そんなこんなで、中途半端な関係がしばらく続きます。
あの人との仲はとてもうまくいっているように見えるのに、実際につき合っているのは浜田君の方なのです。完全に体と心がバラバラのように感じられました。
青年はそんな状態に耐えられなくなります。そうして、ついにあの人に向かってこう言ってしまったのです。
「中途半端な関係はもう嫌だから、どちらか選んで!浜田君とつき合い続けるなら、もうボランティアには行かない!」と。
電話の向こうで、彼女が迷っているのを感じました。
そこで、青年はこう付け加えます。
「すぐに決めてとは言わないから。しばらく考えてみて。1ヶ月くらいは待つから」
そう言って、青年は電話を切りました。
noteの世界で輝いている才能ある人たちや一生懸命努力している人たちに再分配します。