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聖書でなぜ竜・蛇が悪の象徴になったのか? 竜と蛇①

シャローム!
ホーリーランドツーリストセンターの平和です!
今回は聖書の大きなテーマである竜と蛇シリーズの第1弾です。


古代レバントにおける竜とは?

テルアビブ大学にてレバント(現在の中東周辺)周辺の神話(バビロニア神話など)について学ぶ機会がありました。
その中でよく登場する題材が空(天)の神様が海の獣(竜)と戦うというものです。
*古代の竜のイメージは海の竜が多いです。

例えば
バビロニア神話
マルドゥク (風・雲・雷を操る神) vs. ティアマト(海の神)

ウガリット神話
アダド/バアル (嵐の神) vs. ロタン (海の獣)
*ロタンはヤム(海の神様)の手下で、ヤムというのはヘブライ語を含むセム語派でを意味する言葉です。

聖書にもこの構図は登場しますよね!
神様(ヤハウェ) vs. レビヤタン(海の獣)
詩篇 74:14、ヨブ記 41、イザヤ27:1など
ヘブライ語(旧約)聖書において神様が雲・雷といったものと関連付けられているのも興味深いことです。

ギュスターヴ・ドレ "The Destruction of Leviathan" (Wikipediaより)

古代神話の構図と聖書の決定的な違い

ただ、聖書におけるこの
空(天)の神様 vs. 海の獣
という構図は特徴的なものになっています。
実はこの海の獣というのは創世記 1章に登場します。
一般的に、この海の巨獣は絶滅した恐竜などいったものとして理解されていますが、霊的な被造物として解釈することもできます。

וַיִּבְרָ֣א אֱלֹהִ֔ים אֶת־הַ⭐️תַּנִּינִ֖ם הַגְּדֹלִ֑ים וְאֵ֣ת כָּל־נֶ֣פֶשׁ הַֽחַיָּ֣ה׀ הָֽרֹמֶ֡שֶׂת אֲשֶׁר֩ שָׁרְצ֨וּ הַמַּ֜יִם לְמִֽינֵהֶ֗ם וְאֵ֨ת כָּל־עֹ֤וף כָּנָף֙ לְמִינֵ֔הוּ וַיַּ֥רְא אֱלֹהִ֖ים כִּי־טֹֽוב׃

 Genesis  1:21 (BHS OT)

神は、⭐️海の巨獣と、水に群がりうごめくすべての生き物を種類ごとに、また翼のあるすべての鳥を種類ごとに創造された。神はそれを良しと見られた。

創世記 1章21節
聖書 新改訳2017

この海の巨獣というものがヘブライ語で
単数形 תַּנִּין(タニン)
複数形 תַּנִּינִם(タニニム)
この単語はヘブライ語聖書に14回登場しており、海の巨獣/海の獣/竜/蛇などと訳されています。

例えば、英語のNIV(New International Version)訳では以下のように翻訳されています。

14回登場するתַּנִּין(タニン)の訳され方(NIV)

イザヤ27:1に登場するレビヤタンはこの霊的な被造物תַּנִּין(タニン)として表現されています。

בַּיֹּ֣ום הַה֡וּא יִפְקֹ֣ד יְהוָה֩ בְּחַרְבֹ֨ו הַקָּשָׁ֜ה וְהַגְּדֹולָ֣ה וְהַֽחֲזָקָ֗ה עַ֤ל ⭐️לִוְיָתָן֙ נָחָ֣שׁ בָּרִ֔חַ וְעַל֙ ⭐️לִוְיָתָ֔ן נָחָ֖שׁ עֲקַלָּתֹ֑ון וְהָרַ֥ג אֶת־הַ⭐️תַּנִּ֖ין אֲשֶׁ֥ר בַּיָּֽם׃  ס  

Is 27:1 (BHS OT)

その日、主は、鋭い大きな強い剣で、逃げ惑う蛇
⭐️レビヤタンを、曲がりくねる蛇⭐️レビヤタンを罰し、海にいる⭐️を殺される。

イザヤ書 27章1節
聖書 新改訳2017

他の神話では空(天)の神様と海の獣と対等に戦うという物語になっていますが、

聖書においてこの(後に神様に反乱する)海の獣というのは被造物にすぎません。

当時よく使われていたモチーフ(空の神様vs.海の獣)を見事に使いながら聖書の神様の全知全能を表現しています。
聖書においてvs.という構図が成り立たない程に神様の絶対的存在が表現されています。

古代の竜のイメージは蛇のようなもの?

現代において竜というと西洋のドラゴン(翼を広げて、2本足で立っている)をイメージしがちですが、

モンスターハンターシリーズの「リオレウス」

どうやら古代は違ったようです。

新アッシリア帝国の円筒印章 ティアマト(Wikipediaより)

上の画像は紀元前8世紀ごろの新アッシリア帝国時代の円筒印章のティアマト(海の獣)です。蛇のイメージの方が強いですよね。

はい。そこでピンと来たあなた!
エデンの園ですよね!

聖書ではよく暗闇が対照的に描かれますが、この暗闇を表す生き物として竜(海の獣)が登場します。

聖書において暗闇・混沌と関連する海・荒野

古代の人々にとって海・荒野というのは人間が生活できない場所という認識があります(現代の技術を持つ私たちとは違います)。
怖い恐ろしいといったイメージを持っていました。
そのため、聖書において

荒野 = 暗闇・混沌

という構図が多々出てきます。

この構図を考えながら聖書を読むと以下について考えさせられます。
また将来的に記事を書きたいのですが

  • ヨナが大きな魚に食べらることが象徴するもの

  • ダニエル書の四頭の大きな獣がから上がってくる

  • イエス・キリストが荒野で試みを受ける

  • イエス・キリストが静める・上を歩くなど

古代の人々の考え方で聖書の物語を読んでみると、また違ったメッセージが見えてきます。

聖書のキーワード: 蛇 נָחָשׁ

ヘブライ語でנָחָשׁ(ナハシュ)です。
このנָחָשׁ(ナハシュ)という単語も竜の תַּנִּין(タニン)同様、非常に大事なキーワードになってきます。
それは、の獣תַּנִּין(タニン)とは対照的に、(荒野)の獣がנָחָשׁ(ナハシュ)であるからです。

海の獣תַּנִּין(タニン)

地(荒野)の獣נָחָשׁ(ナハシュ)

どちらも暗闇・混沌を連想させる言葉になっています。

בַּיֹּ֣ום הַה֡וּא יִפְקֹ֣ד יְהוָה֩ בְּחַרְבֹ֨ו הַקָּשָׁ֜ה וְהַגְּדֹולָ֣ה וְהַֽחֲזָקָ֗ה עַ֤ל ⭐️לִוְיָתָן֙ ⭐️נָחָ֣שׁ בָּרִ֔חַ וְעַל֙ ⭐️לִוְיָתָ֔ן ⭐️נָחָ֖שׁ עֲקַלָּתֹ֑ון וְהָרַ֥ג אֶת־הַ⭐️תַּנִּ֖ין אֲשֶׁ֥ר בַּיָּֽם׃  ס  

Is 27:1 (BHS OT)

その日、主は、鋭い大きな強い剣で、逃げ惑う⭐️⭐️レビヤタンを、曲がりくねる⭐️⭐️レビヤタンを罰し、海にいる⭐️を殺される。

イザヤ書 27章1節
聖書 新改訳2017

実際にイザヤ27:1を見てみると
タニンתַּנִּין(竜)
ナハシュנָחָשׁ(蛇)
という言葉が
レビヤタンלִוְיָתָןを表現する言葉になっています。

また、出エジプト記でも
モーセ
に変える場面でという言葉がヘブライ語でנָחָשׁ(ナハシュ)と תַּנִּין(タニン)の入れ替わって使われていてとても興味深いです。

最後に

タニンתַּנִּין(竜)ナハシュנָחָשׁ(蛇)という言葉に注目しながら聖書を読むとまた面白い読み方ができます!
竜と蛇
シリーズ続きます!

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今回の参照

今回の記事はBible ProjectのChaos Dragonというポッドキャストシリーズから学んだものです。

また、こちらのテーマが英語で短くかつ分かりやすくまとまった動画です。


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