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ショートショート ポポパポペピアノ

「ジャン! ジャジャジャン、ジャジャジャン、ジャジャジャン」
お菓子とお茶を用意して居間に戻ると、娘が指でテーブルをたたいていた。
「おやつですよ」
娘の手の届かないところにお盆ごと置く。
「うん。後で。今いいところだから」
娘は真剣な顔だ。
「演奏中でしたか、先生」
娘が腕を組んで頷いた。
「うむ。グランドピアノをな。ジャジャジャン」
娘が右手を得意そうに降ってみせる。
「スキャットみたい。『ピーパッパパラポー』」
「何それ」
娘が目を丸くした。
「これ? スキャット」
「スキャット?」
「そう。『パッパパラッポパパパ』」
「わたしも! わたしも」
娘が身を乗り出して、頭上を見上げた。娘が考えるときのくせだ。頷いて、机を叩くのに合わせて声を出す
「パ、パポポン、パポポン、パポポン」
「変わった音色」
思わず笑ってしまうと、娘が嬉しそうにうなずく。
「うむ。ポポパポペピアノじゃ!」
それからたっぷりポポパポペピアノを聞いた。お茶はすっかり冷めちゃった。

ショートショート No.580

たらはかにさんの毎週ショートショートnoteに参加しています。
今週のお題は「オノマトペピアノ」。
裏お題は「ポポパポペピアノ」です。