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エッセイ ふらふらフラミンゴ

 デスクワーカーだ。(猫だけど)。
 毎日、一日中パソコンの前に座っているものだから、ある日突然、ぎっくり腰になった。
 重いものを持ったわけでも、変な姿勢をとったわけでもない。
 繁忙期に狂ったように仕事をしていて、突然立ち上がれなくなった。立ち上がろうとするとぶるぶる腰の付け根が震え、ちょっと動かすだけで激痛が走る。

 整形外科に担ぎ込まれ「ぎっくり腰ですね」の宣告を受け、休養。回復。その後、繁忙期の度にぎっくり腰を繰り返すようになった。

 このままではいずれ腰がちぎれると思った私は、生活方法を見直すことにした。まず、家の椅子を撤廃した。かわりに、バランスボールに座った。臀部が硬いことが腰痛の主な原因だと考えたからだ。

 次に、日に1時間の散歩。リハビリ時にウォーキングは一定の効果があった。予防にも、効果があるはず。

 業務上の無理をしないこと。忙しすぎる時は「腰が抜けるのでやめてください」とドスを聞かせることにした。以前、過労とストレスで円形脱毛症になったことがあり、「毛が抜けるんでやめてください」というセリフが一定の効果があったことを確認している。

 最後に、運動である。(散歩は運動ではなく気分転換にカウントされていた。)
 近所の、太極拳教室に通うことにした。武道要素のほとんどない、健康太極拳である。平均年齢が私を除くと65を越すといういぶし銀の教室だった。二十四の太極拳の形を、講師の先生がやるのを見本にしながら、ひたすら繰り返す。それだけ。すごいラジオ体操のようなものだ。

 入ってみて驚いたのは、まず、全然動けない。先生がもう70近い方だったのだが、先生の真似をしようとしても、全然おいつかない。ちょっと伸びない、とか、ちょっと上がらない、とかではない。何をどう動かしたらいいのか皆目見当もつかないのだ。自分がいかに自分の体をコントロールできないか、思い知った。もしも、自分の体について驕り高ぶっている方がいたら、是非やってみてください。

 どの部分が効果があったのかわからないが、その後、ぎっくり腰をすることはなくなった。ぴたりとやんだ。

 ちょっと業務上の都合で太極拳教室に通うことはできなくなったが、それでも毎朝太極拳をする習慣は残った。邪道だけど、音楽がある方が気分が盛り上がる。今は米津玄師のFlamingoを聴きながらやっている。前に見たFlamingoの踊ってみた動画がかっこよかったからだ。

 太極拳ではないけれど。

 本当は少し(だいぶ)太極拳にはテンポが早くて先生に見られたらきっと怒られる。だけど音楽にのるだけで5割増しぐらい達人になったような気分になる。

 今日も明日も、ふらふら、ふらふら、踊っている。達人になるぞ。いつか。

エッセイ 004

出てきた曲
 ご存知米玄師さんの「Flamingo」です。歌詞がいいなあと思います。達人になるついでに色気もでないかなあ。


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