「うちの子は大丈夫かなぁ?」への僕の答え。
法務教官という仕事は珍しい。
初対面の方には99.8%の確率で
「初めて会いました」と言われる。
そして
2回目にお会いしたときには
60%くらいの確率で「刑務官」と言われる。
で
特に,小学生くらいまでの子を持つ子育て世代の方から質問…というより会話の中のやり取りとして登場するのが
「うちの子は大丈夫かなぁ?」
「少年院に行くような子にならないかなぁ?」
という疑問だ。
疑問というより不安…いや「可能性の1つとして想定してみた」という程度のものだろうと思う。
僕の答はいつも決まっている。
大丈夫。
保証はできないけど,
ほぼ確実に来ないですよ。
別に安心させたいわけじゃなく,
素直にそう思っている。
その方のお子さんも,
これを読んでいる貴方のお子さんも…
ほぼ確実に少年院には来ない。
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1)悪いことしただけでは少年院には入らない
「どんな罪を犯せば少年院に入るの?」
「どれくらい重い罪を犯せば少年院に行くの?」
割とよく訊かれる質問だが,申し訳ないことに実は…そもそもの前提がちょっと違う。
少年院送致は,罪の重さでは決まらないのです。
少年院送致は「非行の事実+保護の必要性」で判断される。
これは大人が刑務所に行く流れと,未成年が少年院に行く流れを極めて簡単に図にしたものですが…
未成年が法に触れる行為の疑いで逮捕され,少年院送致が検討され始めると,基本的には「少年鑑別所」というところに送られる。
少年鑑別所というのは,スーパーざっくり言えば…
この子はどんな子なんだろう?
この子はどんな風に生きてきたんだろう?
を整理していくための場所で…心理のスペシャリストたちが面接したり,法務教官たちが心情の安定を図りながら行動様式を把握したりしている。
彼らが少年鑑別所にいる間…
警察官が非行の事実を詳細に調べ,家庭裁判所調査官は家庭や学校等の生活環境の調査を行っている。
家庭裁判所はそれらを基に「保護の必要性」を検討するのです。
だから
未成年が法に触れる行為をしても必ず少年院に行くわけではなく…それは「罪の重さ」で画一的に決まるものではないということです。
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2)もうちょっと具体的な話を…
極端なたとえ話ですが…
幼い頃に捨てられて,ホームレスに混じって生活しながらコンビニからお弁当を盗んだA君と
両親と兄が一緒に住んでいて普通に学校に通い,たまたま学校でケンカして大暴れし,相手を全治3ヶ月の大怪我させたB君では…
刑法的な意味での罪の重さはきっとB君の方が重い。
でも
保護の必要性は圧倒的にA君の方が高い。
この場合,両方が少年院送致になる可能性はあるし,むしろ…A君だけが少年院に送られる可能性もゼロではないのです。
(本当はこんな簡単には言えないので,少年鑑別所に送られて,様々な人が調査,検討するのですが)
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3)改めて保護者の不安に回答
改めて回答。
「少年院行かないかなぁ?」という疑問には2つの要素がある。
①非行しないかなぁ?
②少年院に入らないかなぁ?
未来は不確定なので…
「そうなる確率はゼロではない」という意味では,どちらもありえる話です。
僕の娘だって,非行して少年院に行く可能性はある。
ただ…
例えば「明日車に轢かれて死ぬかなぁ?」という質問があったら…可能性はゼロじゃないけど基本的には起こらないことだと感じられるはずです。
自分で確率を下げることができるし,その方法もほぼ明確だから。
突発的に理不尽な事故に巻き込まれる可能性は決してゼロじゃないけど,その不安は日々感じる必要性がそこまで高くないものだ。
「うちの子は少年院行かないかなぁ?」という質問は,それに近い。
だから僕の回答は基本的に…
「大丈夫,貴方の子はきっと少年院には来ないよ」なんです。
社会性のある親の家庭で子どもが非行する可能性は高くないし,保護の必要性はもっと低い。
本当に少年院送致になってしまう家庭の親からは大抵…そもそもそんな質問出てきません。
最初から
「ま,子育てなんて大丈夫っしょ!」と思ってるか
「非行したっていいんだよ若いんだから」です。
僕と会って冷静に可能性を考慮してる方々とは全然ちがうんです。例外もあるけれど。
結論的には
「僕にその質問をできるような大人である貴方のお子さんは,かなりの確率で大丈夫だと思います」
ということです。
極めて一部に例外もあるけれどね。
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4)まとめ
この国には1.2億人の人がいる。
100歳まで生きるとして,
年代で平等に割れば10代は120万人。
少子高齢化で実際はもっと少ないけれど,それでも100万人規模で対象者がいて,その中で年間に少年院送致になるのは約2000人。
10代として生きる10年間の合計でも約2万人しか少年院には入らない。
確率からいけば東大生になるよりも低い。
そしてその条件には
①非行の事実
②高い保護の必要性
がある。
シングルマザーを含め,これまでに僕に「うちの子は…」と質問をしてくれた人は全員,「保護の必要性が高くなる」気がしなかった。
親類やご近所さんにも子育てを応援してもらい,家庭だけで抱え込むことなく生活していた。
きっとこれを読んでいる貴方の家庭もそうだと思う。
noteには沢山のユーザーがいるが,それでも本当に「保護の必要性の高い家庭」の人はきっとまだ,ここにはいない。(いても極めて少数だ。)
貴方のお子さんも
僕の娘も…
もしかしたら,不健全なことや人に迷惑をかけることをして,補導・逮捕されることはあるかもしれない。
けれど…
ほぼ確実に,少年院送致になるレベルでの「保護の必要性」は出てこないだろう。
だから大丈夫です。
未来はわからないけれど,変に不安にならずに,のびのびと子育てしましょうね。
最後まで読んで頂き,ありがとうございました。
放デイのスタッフをしながら、わが子の非行に悩む保護者からの相談に応じたり、教員等への研修などを行っています。記事をご覧いただき、誠にありがとうございます。