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非行少年に「我慢が足りない」と言う人へ

以前…

こんな記事を書きました。

僕が非行少年たちに語りかけた内容を,記憶をもとに文字起こししたものですが…

100名以上読んでいただいて1いいねという…
僕の記事の中でも,もっとも不評な1本です。

まぁ,

わかりやすい結論は出さずに終えているので,当然っちゃ当然ですし,そもそもいいねの数に固執しているわけでもないのですが…

これは,

僕の経験上,法務教官の矯正教育の最重要項目だと思っている部分なので,少しだけ掘り下げて,その意図を書いておこうと思います。

ぶっちゃけた話…

「この子はガマンができなくて」とか
「意志が弱くて」などという…

安直な表現で子どもの非行を語りがちな世の中への挑戦状でもあります。

ちょっと乱暴な言い方をしましたが,喧嘩を売りたいわけではありません。

結論は「まず自分が今どうやって生きているか,考えてみてね」というメッセージです。

ではいきます。

ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー

みなさんは,一日の中でどんなことをガマンしましたか?

上司の小言
無駄な規則
少ないお小遣い
子どものわがまま
パートナーの無理解…

いろんなものがあるかもしれませんね。
僕も似たようなものです。

では,こんなこともガマンしていますか?

強盗
万引き
信号無視
盗撮や強姦
違法薬物使用…

どうですか?
ガマンしてますか?

たぶん,

これを読んでくださっている人の多くは,
ガマンしてないと思うんですよね。

より正確に言うと…

人生のどこかのタイミングではガマンしたことはあるけれど,日常的にはガマンなどしていない。

という感じ。

僕はそうです。
興味を持ったことはある。
それを想像したこともある。

今だって…

例えば大事な約束に遅れそうな時に,
信号無視を必死でガマンすることはある。

でも,

基本的にはガマンなんてしないです。
だって自分の行動の選択肢にないんだから。

選択肢にないんだから
ガマンする必要もない。

ガマンってのは…
「やりたいけどやらない」ってこと。

でも僕たちは普段,強盗や強姦を…
やりたいと思わないじゃないですか。

それなのに,

子どもが非行してたら「ガマン不足」って…
どういう理屈ですか?

普通ね…

犯罪はガマンするもんじゃないんですよ。
非行はガマンの対象じゃないんです。

自分にとってガマンの対象ですらないことを,
子どもに「ガマンしろ」というならば…

あなたはまず…

酒かタバコか,
セックスやオナニーを
大好きなYoutubeやInstagramを

ガマンしてみてください。
今日一日でも,3時間でもいい。

ガマンなんかで人が生き方を変えることが,
どれほど無理難題かがわかります。

非行や犯罪と趣味嗜好を一緒にするな…?

それこそ論点がズレている。

問題は「どんな行動か」ではなく
「行動をガマンで変えられるか」なので。

非行や犯罪は法律で禁止されてる…?

じゃ聞きますが…

あなたは刑法読んだことありますか?
迷惑防止条例読んだことありますか?
校則が書かれた生徒手帳…読みましたか?

あたりまえにルール守って生きてる人の多くは,
ルールブックなんて読んだことないはずです。

それはスポーツだって一緒。

僕はサッカーもバスケも野球も…
ルールブックを読んだことなんて一度もない。

でも試合は出たことはあります。
そして楽しんでます。今も。

あなたが人を殺さないのは,
刑法を読んだからですか?

刑法から199条殺人罪が消えたら,
あなたは人を殺しますか?

人はルールブックに従って
生き方を選ぶわけじゃない。

ルールブックは…
人を縛るためにあるんじゃない。

ルールブックは…

「理不尽な行為」に対して冷静に判断を下すためにあとから作られたものであって,ルールブックが人の行動を制限しているんじゃない。

僕たちは,生まれてから刑法を読まされてルールを守るようになったんじゃないはずです。

僕たちは…

生まれてから今日までのどこかで…
様々な経験を通して…

人を殺したくない自分,
モノを盗みたくない自分,
相手や社会に配慮する自分ができてきて…

結果,

社会のルールの内側にいるんです。
社会のルールの内側に自分の自由があるから…

ガマンしないでフツーに生きて,
逮捕されずに生活してる。

ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー

もちろん

ルールを学び,それによって意識的に自分の行動を選択したり,修正することはある。

車の運転なんてその代表格だ。

でもそれだって「ルールを守って安全に運転しよう」という自分の規範意識が土台にあるからできることで,最初からルールを無視する人間にとっては,道路交通法も交通マナーも関係ないんですよ。

ルールを守る感覚のない人間に
ルールを学ばせても意味がない。

そして

ルールやマナーを守る感覚は,
罰やお勉強からは生まれない。

ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー

非行少年はたしかにガマンが苦手だ。

だけど

非行や犯罪は,ガマンだけでは絶対にどうにもならない。

なのに世の大人が…

「お前がガマンが足りない」
「お前は意志が弱い」

なんて言うもんだから…非行少年たちは少年院に入って必ずこんなことを言う。

「僕はガマンができないから非行しました」
「非行の原因は意志の弱さです」

ガマン…?

一時的にそれは必要だ。

だけど…

社会生活はガマンの積み重ねではない。社会はガマンで組み立てられているわけじゃない。

だから,更生ってのは…

ガマンしなくても非行しない人間
気を張り詰めていなくても普通に生きていられる人間

になることなんだと僕は思います。
少なくともそこを目指す必要はあると。

少年院はガマンも教える。

だけど…

ただガマンさせる場所ではない,断じて。

だからこそ,

自分が日々の行動選択を
どのように行っているのか?

そんな自分はどのようにして形作られたのか?

それをきちんと考え,
言語化する努力が必要なのだと,僕は思います。

ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー

あなたはどう思いますか?

最後まで読んでいただき
ありがとうございました。

放デイのスタッフをしながら、わが子の非行に悩む保護者からの相談に応じたり、教員等への研修などを行っています。記事をご覧いただき、誠にありがとうございます。