カブの旅 第33話「宮床ダムでリゾット」
※目次はこちら。
めちゃくちゃ気持ちいいぞ、とカブが言っていた。
「何が?」
と僕は、どこかで聞いたことあるような出だしだな、と思いつつ答える。
(この時期にバイクで走るのは、だ。特に今日みたいな日とかな)
「まあ、そうだろうねえ」
5月4日の仙台は雲一つない好天で、まさに行楽日和となっていた。軽装でも寒くも暑くもない5月はバイクのベストシーズンといっていいだろう。昨年末からカブに乗り始めた僕にとっては初めてのオンシーズン、その恩恵を得るために出かけるのもやぶさかではない。
ちょうどアウトドア飯の本も買ったことだし。
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行き先に決めた宮床ダムは、仙台市の北面に隣接する大和町にある。以前行った七ツ森湖(*第14話参照)から程近い。仙台から行くにはいくつかルートがあるが、個人的には国道256号線がおすすめだ。泉パークタウン前をいくこの道は路面が綺麗でほぼ直線だし、視界も開けているため走りやすい。ただし最後に急カーブ(ほぼ直角に折れている)があるので飛ばしすぎには注意した方がいい。
そんな道とちょうどいい気候も相まって、道中はカブの言う通りめちゃくちゃ気持ちがよかった。寒くないっていいものなんだなあと、東京からの帰り道に福島の山中で見た気温0度の電光掲示板を回想しながら思う。
256号線の突き当たりに457号線が左右に走っている。右に行けば以前行った七ツ森湖(ダム)に向かう道で、今回は左に曲がる。
すると間もなく宮床ダムに、そしてそれに付設されてあるあさひな湖畔公園に辿り着く。
ゴールデンウィークでこの混み具合なのか、あるいはゴールデンウィークなので皆がもっと違うところに行っているから逆に空いているのか。人はちらほらといるだけで混雑とは程遠く、園内はのどかな空気が流れていた。
芝地の方はやはり火気厳禁だったが、やや下ったところにある、木のテーブルが点々としている広場には火気厳禁の看板はなく、ところどころに燃やした炭の跡があったため、こちらで調理することにした。
用意をしているとぱらぱらと人がやってきては、タープを広げたりバーベキューを始めたりしていたので、やっぱりちょっとしたアウトドアができる広場として認知されているみたいだった。
さて、本題のアウトドア飯。
今回の僕は前回とはひと味違う。
なぜならきちんと料理本を用意してきたからだ。
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購入したアウトドア飯本はこちら。
用意する道具も材料も少なく簡単にできる、アウトドアに適した料理がまとめられたこの本は、バイク移動かつ特段料理の心得のない僕にはうってつけの本といえた。電子書籍版もあるで、スマホに入れておけば旅先で手軽にレシピを見ることができる。
全部で37個あるレシピのうち、今日はリゾットと餅ピザを作ることにした。
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まずはリゾット。材料はこんな感じ。
本ではむき甘栗を入れてマロンリゾットにしていたけど、シーチキン万能説信奉者の僕は代わりにシーチキンを投入することにした。パックご飯はシェルパ斉藤さんいわく、チャーハンや雑炊など火を通す米料理をアウトドアでするならとても便利なものらしい。
ということで調理開始。まずはほぐしたごはんにコンソメ、シーチキン、水を適量入れて煮込んでいく。
煮えてきたらチーズを投入し、溶けるまで再び煮込む。
チーズが溶けたらもう完成。とろとろと煮えたリゾットのできあがりだ(写真が悪くてよくわからないかもしれないけど、きちんとリゾットになっている)。
味はほぼほぼシーチキンだった。シーチキン信者ならおいしいと言うと思うけど、何らかのペッパーがあったら尚良いかもしれない。
続いて餅ピザ。スライス餅を敷いてピザソーズを塗り、チーズを置いて焼いていく。
ピザには程遠い奇妙な肉塊(餅塊?)になったが、味はどうにかピザだった。餅は多めに焼いた方がボリュームがあって良かった。
二品とも食べる分には手軽でおいしいのでいいのだけど、問題は片付けなのだということが帰ってから判明した。チーズや餅や米は鍋にこびりつくのだ。いくつかの米は鍋と同化したかのごとく取れなくなってしまった。くっつく系の食材は後片付けが大変なのだと知った(外だと自宅のようにすぐに洗えないことが多いので尚更だ)。
といった具合に、個人的にはなかなか料理に励んだのだけど、何だかんだいって炭火で焼いた厚切りベーコンが一番おいしかったかもしれない(例によって例のごとくT氏が隣で肉を焼いていた)。
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食後は宮床ダムを見にいった。
綺麗な公園で人も少なく、景色もいい。
宮床ダムはちょっとしたアウトドアの穴場だったかもしれない。
その分活字を取り込んで吐き出します。