あなたの胸をすべり落ちる涙
東京に帰ってきた。
彼のいない場所に戻ってきた。
少し慣れた東京、自分の趣味が詰まった家、
寝心地のいいベッド、可愛いぬいぐるみ。
そのどれもが彼がいない事を証明している。
最終日の朝。
好きな人の胸の中で目が覚めて、
最終日と分かった途端涙が止まらなくなった。
彼はよく私のことを「可愛い」と言うが
その時ばかりは黙って強く抱き締めて
頭をたくさん撫でてくれた。
アラサーにもなって、彼が恋しくて泣く。
だいぶイタイ奴だけどそれでもいい。
寂しくて何が悪い。
泣きやもうと頑張って堪えていると、
「俺はどこにも行かんよ、あなた一筋だよ。
だから今年中に一緒に暮らそう?
俺がそっちに行くからそれまで頑張ろう。
まろの実家行って親に挨拶しに行くよ」
彼とよく一緒に暮らそうとは話してた。
けど具体的な話は何もしてこなかった。
付き合ってまだ2ヶ月ちょっと。
とても嬉しかった。
少しずつ約束やビジョンが鮮明になる。
彼は私と会うゆきまつりの前に、
自分の親に私のことを報告したと教えてくれた。
「付き合っていて結婚したい相手がいる」と。
彼の親は基本放任主義のようで、
彼と話すことすら珍しいらしいのだが、
「女っ気のないお前が付き合ったのか」
と言われたと教えてくれた。
放任主義でも親はちゃんと見ているんだよ。
お互い口頭で自分の親に
大切な人がいることを伝えた。
これって大きな進歩。
こんな素敵な人が私のそばにいてくれて
なんて果報者なんだろう。
彼の胸を私の涙で濡らしてしまった。
でも寂しい涙から幸せの涙に切り替わった。
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