米国株は金利との綱引きで6週連続下落、先週金曜日のラリーは今後の方向性を変えるのか

2022年5月16日
マネックス証券 岡元兵八郎 (ハッチ)

先週月曜日のS&P500は前週からの弱い地合いを受け3.2%の下げで始まりました。
水曜日に発表された4月の消費者物価指数(CPI)は前年前月比で8.3%でした。
先月の8.5%より若干下がったものの、引き続き1991年来の高い水準と市場の予想を超える結果となりました。これにより市場には失望売りが入りこの日のS&P500は1.6%下落しました。
先週1週間ではS&P500は2.4%の下げ、ナスダック100も同じく2.4%下落、両指数共に6週間連続で下げたことになります。

アメリカの第2四半期の決算発表もほぼ終わりに近づいてきました。
先週金曜日までのところでは、S&P500指数採用企業500社のうち459社が決算発表を終えています。発表済み企業のうち76%が事前予想を上回っており、前年同期比では9.2%の増益となっています。3月末の時点では5.8%の予想でしたのでインフレ、サプライチェーンなどの問題もあり、市場には業績に対する懸念があったものの、最終的には事前予想を上回る内容となっています。

株価は長期金利との綱引きだが、金曜日のラリーは今後の方向性を変えるのか
先週1週間のS&P500のパフォーマンスはマイナスではありますが、金曜日になるとマーケットは突然暴騰し1日で2.4%上げ、ナスダック100はというと3.7%上昇と久しぶりに市場参加者を喜ばせる見事な上げを演じました。なぜ金曜日に突然マーケットが上がったかについては、これという理由が見当たりません。ただ間違いなく言えることは、株価は年初から大きく下がっており、個別銘柄に割安感があり、加えて投資家のセンチメントは歴史的に見ても最悪な状況の中、いつ上がってもおかしくない状況ではありました。そんな中、株価の上げを妨げていたのは金利という重石です。

昨年末1.5%だった米国10年債利回りは5月に入り2018年12月ぶりに3%の大台に載せ、長期金利急上昇の展開を株が嫌うという展開になっていました。長期金利の上昇の展開は米国だけではありません。欧州でも5月には、ドイツの10年債利回りが2015年の6月来で1%の大台に載せています。イギリスの10年債も昨年末1%を切っていたものが、今月に入って2%台に乗せ主要先進国においては急激な金利の上昇となっています。これまでの歴史を見ると、長期的な金利の上昇局面でも株は上がっているのですが、目先の金利の急な上がり方株式市場は嫌い、株は売られざる終えないという状況となったのです。

これまでの急激な金利上昇で債券が売られ過ぎにあったことで、目先の金利の上げは一段落したということかと思います。気になる今後の展開についてですが、個別銘柄で見ると今のマーケットは割安になっています。S&P500指数採用500社の個別銘柄のアナリストの目標株価と先週金曜日の株価との乖離を見ると平均24%程度割安となっています。この割安な株価が本来価値に向かうかの鍵を握っているのはやはり債券市場でしょう。ここから金利が大きく下がらなくとも、ここからはこれまでのような急ピッチでは上がらないという展開を期待しています。

現在のS&P500の下値抵抗線は4000から3800、一方上値抵抗線は4114 and 4308 の辺りとなっています。.

金曜日のラリーはアノマリー的にはポジティブ
これまでボラティリティの高い環境下、マーケットは何度もラリーしようとしたのですが、うまくいかなかったところ、やっと金曜日にマーケットはラリーに成功したと言ったところです。あの日の上げは、テクニカル的にかなり意味のあったイベントだったようです。13日の金曜日のラリーではNYSE上場銘柄の9割以上が上昇しています。
私が週末に読んだBofAの調査によりますと、過去に1日の相場で9割以上の銘柄が上がるのは縁起が良い出来事のようです。これまでに起きた78回の場合では、S&P500は10日後70.5%の確率で上昇、平均で+1.01%、平均値で+1.41%という結果となっています。1ヶ月後であれば74.4%の確率で上昇、平均で+3.04%、平均値だと+3.28%上昇したということのようです。
これはあくまでも、マーケットのアノマリーということですが。

決算発表終盤戦は小売大手
決算発表は未だ終わったわけではありません。
今週の決算発表は、大手小売企業を含む以下の発表が予定されています。

5月17日
世界最大の小売店のウォルマート(WMT)、世界最大のホームセンターのホーム・デポ(HD)。

5月18日
世界2番目のホームセンターのロウズ(LOW)、
ディスカウントショップ大手のターゲット(TGT)、通信機器メーカーのシスコ・システムズ(CSCO)。

5月20日
世界最大の農業機械メーカー、ディア(DE)

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