乱高下する米債券市場、金融不安の中買われるGAFAM銘柄の行方は
マネックス証券 岡元兵八郎
シリコンバレー銀行破綻の余波を受け、米国の債券市場では金利の乱高下が起き、大変なことになっています。
今回の一連の事件の流れは、3月7日のパウエルFRB議長がインフレを抑制するために政策の引き締めを強化するという固い決意を議会に示したところから始まっています。
パウエル議長のタカ派的な発言を受け、市場は次回の利上げは50bpであることは間違いないだろうと判断しました。これにより2年債利回りはついに2007年ぶりに5%を超えてしまったのです。
このように金融市場で金利の急上昇というストレスが存在する中、今回のシリコンバレー銀行の破綻が起きてしまったのです。破綻が起きると金融システムの崩壊につながるのではという見方も浮上、不確実性が高まる中、債券市場では先週金利が乱高下しました。
米国2年債の利回りは、先週月曜日には前金曜日比で0.6パーセンテージ•ポイント(以下PP)下落、翌火曜日には0.27PP上昇、その翌日は0.36PP下落、木曜日には0.27PP上昇、金曜日には0.32PP下落したのです。先週金曜日は最終的に3.84%で終わり、1週間で見ると2年債利回りは0.749PP下落しました。 ただ、そこにたどり着くまでの2年債利回りのボラティリティ(資産価格の変動の激しさを表すパラメーター)は歴史的な高まりを見せたのです。債券版の恐怖指数と呼ばれているICE BofA MOVE指標を見ると、今年の2月には100を切っていたのが先週には180を超えてしまい、2008年来のレベルまで暴騰しています。
今回の金利の乱高下で大きな収益を得たファンドもある一方、莫大な損失を出してしまったマクロヘッジも出ており、一部リスク制限に達してしまったファンドでは運用を止めざる終えなかったようです。 そんな中、株式市場で次のシリコンバレー銀行になるのではとの懸念を持たれたのがファースト・リパブリックバンク(以下FRC)です。サンフランシスコに本社を置く資産規模全米14位地銀である同銀行は空売りヘッジファンドのターゲットになり株価の下落が止まらなくなりました。FRCは、3月12日にJPモルガン銀行を通じて追加融資を受け、総額700億ドル(約9兆円)の資金を利用できるようになったと発表しています。加えて、3月16日木曜日には 11の米国大手銀行が共同でFRCを救済すべく総額300億ドル(約4兆円)を預け入れたものの、マーケットの不安を払拭することはできず株価の下落は続きました。時を同じくして海の向こうの欧州でもクレディ・スイス銀行の経営不安が浮上したことも 加わり銀行株へ売りの拍車をかけることになります。 金利や銀行株が不穏な動きをする一方、株式市場全体は先週上昇しました。 今回の事件でリスク資産となってしまった銀行株が売られる一方、GAFAMのような時価総額が大きく、潤沢なキャッシュフローを生み出しているグローバルな大企業の株が買われるという「質への逃亡」が起きています。昨年金利が上昇する過程で売られたGAFAMですが、今回金利が下がる中、買われるという展開になりました。銀行株が採用されたいないナスダック100は5.83%の上げとなりました。先週特にナスダック指数が上昇したのはこのような理由です。
一方、銀行セクターの比重が3.2%(金融全体では10.3%)であるS&P500は、先週1.54%上昇し終えています。
世界中が注目する今週のFOMCの行方は
今後のマーケットの方向性を決めるのは今週のFOMCです。果たしてパウエル議長は今週水曜日に利上げを行うのか、それとも利上げを停止するのか、今後の方向性について踏み込んだ見解を発表するのか、「CME Fedウオッチ」によると、今回のFOMCについては69%の確率で25bp pの利上げを行うと分析していますが、コンセンサスではその後5月の利上げは停止、その後6月、7月のFOMCでは利下げが行われるという見通しとなっています。
今週のFOMCで今後の金利低下の可能性を示唆する声明が出るようであれば、このところのGAFAM銘柄を中心とするテクノロジーセクターのラリーは続き、ナスダックの上昇も継続されるのではないかと思います。その一方、もしも、パウエル議長が利上げの継続の必要性を説くとするならば、すでに最悪となっている金融資産の下げは、フリーフォールとなり、米国経済に悪影響を与える展開となる可能性が高まるはずです。そう考えると、どうしてもパウエル議長の声明のトーンはハト派的なものにならざるを得ないと思うのです。
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