商標「スカイスパ」は誰のもの?

みんな大好きスカイスパ、横浜駅前にあるいわずと知れた超有名温浴施設です。
「スカイスパ」、「Skyspa」なる商標はいずれもスカイスパを運営する国際企業株式会社の保有する登録商標です。

スカイスパ

SKYspa

実は「スカイスパ」、「Skyspa」の登録商標を保有する企業が他にもあります。カンデオホテルズを国内で展開している株式会社 カンデオ・ホスピタリティ・マネジメント(以下カンデオ社といいます)です。

スカイスパ

Skyspa

指定商品・指定役務

商標登録は、登録を受けようとする商標と、登録を受けようとする商品・役務(サービス)(指定商品・役務といいます)と、の組み合わせで登録され、その範囲において独占的に使用する権利を得ます(商標法25条)。少しだけ詳しい解説がこちらにあります。

商標登録は早い者勝ち

商標登録は早い者勝ちで、既に登録された商標は審査ではねられて登録できません(商標法4条1項11号など)。しかし上記によると同じ「スカイスパ」という商標が異なる二者が登録を受けています。なぜでしょうか?
これは上記の通り、登録商標が商標と指定商品・役務との組み合わせで登録されることに理由があります。

詳細は省きますが、カンデオ社は、2008年に先に「スカイスパ」についてすでに商標登録を受けています。後塵を拝した国際企業株式会社は先に登録され、カンデオ社が保有している「スカイスパ」の指定商品・指定役務に抵触しないように出願し登録を受けているようです。

カンデオ社は、

44類
美容,理容,入浴施設の提供,あん摩・マッサージ及び指圧,カイロプラクティック,きゅう,柔道整復,はり,健康管理に関する指導・助言及び情報の提供,健康診断,介護

国際企業株式会社は、
35類
インターネットのウェブサイトによる広告,インターネットのウェブサイトによる商品の販売に関する情報の提供,インターネットのウェブサイトによる通信販売の受注及び配送に関する事務処理代行
41類
映画の上映・制作又は配給,運動施設の提供
43類
宿泊施設の提供,飲食物の提供

について登録を受けているようです。両者は互いに重複していないことがわかるでしょう(簡単のため説明をかなり端折っています)。

意外な状況

先に出願をしたカンデオ社は「入浴施設の提供(44類)」でサウナに関して押さえていると思われます。これは両社共に別に出願しているロゴマークの出願についても同様です。サウナ施設の代名詞ともいえるような商標「スカイスパ」が先にカンデオ社に押さえられているという状況です。

商標権者は、自己の登録商標等を指定商品等について使用する者に対してその停止等を請求することができます(商標法36条等)。国際企業株式会社はサウナを含む入浴施設の提供をしていますが、商標権をはじめとした商標を使用する権利を有していないように見えます。そして、今現在も国際企業株式会社はカンデオ社の登録商標「スカイスパ」を指定役務である「入浴施設の提供」について使用(これは明らかですよね)しています。つまり、カンデオ社が自己の商標権を主張して裁判を国際企業株式会社に起こした場合に、カンデオ社が勝訴する可能性が、その大きさはさておき、有する状態にあるといえます。

なぜこのようなことになっているのか、公開された情報のみでは知り得ないのですが、意外な状況で少々驚いています。

スカイスパは「スカイスパ」を使えるの?

商標権者から訴えを起こされたとしても、正当な権原があれば訴えを退けることができます。今回のケースではいろんなパターンが考えられるかと思いますが、例えばカンデオ社の出願の時にすでに「スカイスパ」が国際企業株式会社のものとして有名(周知)であって、国際企業株式会社が今後も継続して使用する場合(他にも要件があります)には、裁判の場などで抗弁として主張し、これが認められれば使用を続けることができます。ただし、あくまでも例外的規定であるため、適用は限られます。そして何より揉め事(裁判)になった後に用いる武器のようなものですので、そこに至るまでにリソース(お金・時間・もろもろ)を消耗するといった大きなデメリットがあります。

おわりに

ここで、ブログ記事なんかでは商標登録はお早めに!とか言ってクロージングトークになるのでしょうが、そういったものはありませんので安心してください。ただ、やはり事業を始めるときには商標登録出願をしておくのは後々いろんなトラブルに巻き込まれないために大切だと思います。後回しになりがちですが。

言い訳

終わりといっておきながらさらに最後に言い訳をしますと、上記記事は公開情報に基づきますが、公開された情報のみでは真実は捉えられないということです。もしかしたら国際企業株式会社とカンデオ社の間で登録商標の使用許諾(ライセンス)の契約が存在するかもしれませんし、国際企業株式会社がサウナについて商標登録をしていないのは何らかの事情があるのかもしれません。このことについて施設に凸したりするのはやめてください。迷惑だと思います。

あー書いてたらスカイスパ行きたくなってきた。おわり。

その後

スカイスパはなぜ「スカイスパYOKOHAMA」かを今頃気づきました。「スカイスパ」と「YOKOHAMA」は離れて表記しちゃいけないんです。そういうことです。あくまで推測ですが、カンデオ社と国際企業株式会社の間で協議の結果、取り決めがなされているのでしょう。


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