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最強お助け魔女コンビ#05

もうすぐ11時、ジーンはドキドキしながら、玄関のドアの前に立っている。「どうか、お願い、ドアよ開いて!」そう願った瞬間、木戸から稲妻の形の光りが発せられ、扉が開いた。

扉の前には、ペティーがぼんやりと立っている。ジーンは、すかさずペティーの手を引っ張って中へ招き入れた。「ようこそ!ペティー!待っていたのよ」とジーン。ペティーは何が何だか分からなくてまだぼうっとしている。

キッチンのテーブルに座ったペティーの前に、マチルダがお茶を出す。一見、普通の紅茶に見えるけど、実は白樺の木の樹皮と葉を粉にしたものを煮出したのだ。上には、乾燥イチジクが浮かんでいる。かなりのデトックス効果があるから、痩せたいペティーにはピッタリだ。


「どうぞ、お話をする前にひとまず飲んでリラックスしてちょうだい」とマチルダ。ジーンの前にもお茶を置く。ペティーはゆらゆら屋敷の室内をぐるっと見回した。古めかしいソファーに、キノコの形をしたイス。こちらもかなり古そうな本棚にはジーンにも読めるタイトルの本と、見たこともない文字のタイトルの本が入り混じっている。キッチンはコの字型、後ろの壁にはずらっと薬草らしきものが入ったガラス瓶が並んでいる。しかも最新のエスプレッソマシーンまである!


一口、お茶を飲んで、「ここはどこですか?」とペティーが聞いた。マチルダが、ここは魔法界にある「ゆらゆら屋敷」だと紹介する。「魔法界?」とペティー。ペティーは食べることは大好きだったけど、読書は苦手。ハリーポッターさえ読んだことがない。そこでジーンが「あなたを助けてあげたいの」と口を開いた。

ずっと人間界のテレビでペティーを見守っていたこと、ペティーが告白できるように手伝いたいこと、魔法界の力を使って痩せるための方法、などを一気にまくし立てる。ペティーは口をあんぐりと開けて、弾丸のようにしゃべり続けるジーンを見ていた。「この子は何を言ってるんだろう?魔法?痩せる?人魚の漁師?何のこと?」


こんなこともあろうかと、ジーンは人間界の本を熟読し、相手を説得する方法を身につけていた。とにかくプレゼンが大事だ。ペティーの前に手書きで書いたイラスト入りの資料を広げ、熱心に説明し始める。痩せる前と痩せたあとのイラストまでとてもリアルに描かれていた。次第にペティーもその話に引き込まれ、気づいたら、2人の助けを受けて痩せることを承諾していた。

あと一押し!ジーンはすかさず魔法使いと人間の間で交わされる契約書を持ち出し、ペティーにサインさせる。もちろんサインは血文字だ。マチルダのカボチャ型の裁縫箱から針を取り出し、プチッとビーズぐらいの血を出したら準備は完了。契約書に「ペティー・ブランシェット」とサインさせる。これでペティーはもう契約を破ることができなくなった。

破った時は… 二度と人間界に戻れなくなる。


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