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最強お助け魔女コンビ#10

龍使いのデルタがやってきた。ジーンとペティーはわくわくしながらドアの前に立っている。その龍は、群青色でとても美しいうろこを持っていた。ペティーはおそるおそる龍のうろこに触ってみた。デルタがやさしく「お嬢ちゃん、そのうろこはとても頑丈で、どんな矢も貫通できない」と言う。ペティーはジーンを見て言った。「こんな龍に乗れるの?すごいね」

ジーンも龍に乗るのは初めてだ。さすがマチルダおばさん、何でも知っている。ジーンはうれしくなって、早く乗ろうと言った。デルタは2人が振り落とされないように、ベルトで脚をくくりつけてくれた。ジーンはペティーのおなかに手を回し、しっかりとつかまっている。

「さあ、出発するぞ!」龍は空高く飛び上がり、雲の上に出た。太陽がキラキラとまぶしくてジーンは目をつぶった。デルタがサングラスを取り出す。「まぶしいからこれをかけて、さあ行くぞ。これからさらにスピードがアップするからしっかりつかまってろよ」

龍の名前は、ジークリフと言った。力強い龍で、ぐんぐんと飛んでいく。あっという間にゆらゆら屋敷は見えなくなり、デルタがうれしそうに「さあ、どんどんスピードを上げて、今度は雲の下に行ってみようか」と叫んだ。

その声を聞いてジークリスは雲の中に突っ込む。一瞬、世界は真っ白になり、ペティーはまるでパン焼き器から出てくる蒸気の中にいるような気分になった。「パンを焼くいいにおいまでする気がする!」とペティーは思った。

しばらく雲の中を飛んだあと、ついに雲の下に出た。するとそこには虹色の海が広がっていた。その海は光の加減で虹のように色が7変化するのだ。

「海って青いだけかと思っていた!」とペティーが叫ぶ。デルタは、ここは特別な海なんだ。こんな色の海はここだけじゃよ。もう少しすればサメ海岸に到着するからな。

デルタのくれたサングラスには落下防止のヒモがついていたから、ジーンとペティーはしばしサングラスを取って首にかけ、7色に輝く海を鑑賞した。本当にこの世のものとは思えない。二人がうっとりしていた時、がくんと衝撃が来て、ジークリフ急停止した。

どうやら、目の前を飛行艇が通り過ぎていくようだ。赤い飛行艇は一回転して、パイロットがこちらにウインクをした気がした。「あれ?あのパイロットさん、鼻が豚みたいだった、あれって…」すかさずデルタが言う。「あの豚はな、紅の豚ってあだならしいぞ」

飛行艇が通り過ぎると、ジークリフは下へ下へと降りていった。ついにサメ海岸に到着する。サメ海岸にはサメの形をした大きな岩がある。その下には人魚漁師たちの漁師小屋があるのだ。ジークリフは颯爽とサメ岩に降り立つと、ジーンたちを降ろしてデルタと帰っていった。

岩場から漁師小屋までは岩を下りていく必要がある。身軽なジーンはいいけど、ペティーは体が重いから一苦労。ここでケガをしたら元も子もない! ジーンは背負っていたリュックからロープを取り出した。ロープをくくりつけるためにがんがんと杭を打つジーン。見習い魔女はこれだから大変なのだ。一人前の魔女なら一瞬で港の漁師小屋まで飛んでいけるのに、今日はほうきすら持ってきていない。そんなことを思いながら黙々と杭を打ち、ロープをくくりつけてペティーの体に巻き付け下に下りていくように指示する。ペティーが着地したのを見届けたジーンはロープを回収し、ぴょんぴょんと岩場をジャンプし下りていった。

漁師小屋の前にはおじいさんがいて、網の修繕をしていた。ジーンが素早くおじいさんに近づいて尋ねる。「こんにちは、おじいさん。それ人魚漁に使う網ですか?」顔も上げず黙々と修繕を続けるおじいさん。

怪訝に思ったジーンがおじいさんの顔をのぞき込むと、どうやらイヤホンで何か聞いているらしい。しかも最新式のワイヤレスイヤホンだ! ジーンはトントンとおじいさんの肩を叩いた。おじいさんがやっと顔を上げる。

ジーンはもう一度おじいさんに聞く。「こんにちは、それ人魚漁に使う網ですか?」おじいさんは無言で頷いた。何から説明しよう。ジーンはしばらく頭の中で言葉を整理する。ジーンの頭の中は、パソコンのようになっていて、頭の中でキーを押して文章を入力すると言葉が出てくる感じなのだ。よし!決まった!ジーンは弾丸のように話した。「おじいさん、その人魚の網で恋(こい)を成就させるためにコイを捕まえないといけないんです」ジーンのあまりの勢いに面食らったおじいさんは、貝殻のプレーヤーをパタンと閉じてイヤホンを取り、「まあ、ひとまず中へお入り」とジーンたちを漁師小屋への中へと招き入れた。


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