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[小説]ゲイがキライなゲイが生きてゆくには 1
「同性カップルは"生産性"がない」
どこかの女性議員がどこかで発言したらしい。
そう朝のニュースで取り上げられている。
これについて、ネット上で抗議の声が上がっているらしい。
テレビでそんなニュースが流れた。
ゲイの俺は、何も思わなかった。
いや、むしろ
「正しい」
と思った。
テレビの左下に映る時刻に呆れ、
いつものように朝食も取らずに髭を剃り、スーツに着替えて、髪を整えて、家を出た。
電車に揺られ、堅苦しいスーツに逆らい、ワイヤレスイヤホンを耳に差し込む。
片手に吊革、もう片方でスマホをいじり、ビヨンセの4というアルバムを選んで再生ボタンを押した。
窓の外を見ていた。変わらない景色。昨日が繰り返される。
ふと、車内の電子掲示板に目をやると今朝と同じニュースが10秒くらい流れていた。
「少子高齢化」
そんな言葉が頭によぎった。
考える間も無く次のニュースに変わり、新たな情報が無意識に身体に入り込んでくる。
窓の景色が、降りる駅に着くことを教えてくれ、電車が停車した。
電車を降りて、いつも通り流されるように半自動で改札を出た。
改札を出れば、あとは馴染むだけだ。
会社が入っているビルの自動ドアが開き、
いつも目が合う警備員に、
顔見知りの他社の社員に、
話したことのない同じ会社の人に、
同期に、
同じフロアの人に、
そして同じ部署の人に。
どの人にも、分け隔てなく、丁度いい挨拶をする。
丁度いい挨拶。少しはにかんで、柔らかい声色で、軽くお辞儀する。
「おはようございます」
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