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Ami Ⅱ 第7章‐司令官①   

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僕たちは出発し、高度を上げました。
宇宙船の水平性を変えずに地球の反対側まで行ったので、地球が『上』、僕たちが『下』になってしまったのです。
そして、僕たちは、『上昇』のように見える『降下』を始めました。
上空の都市の明るい点が見えましたが、逆さまで、まるで世界が上から降りてくるかのようです。
船の中では、本当の『下』が床であると感じていたのですから不思議なものです。
「人工重力があります。」とアミ。
「では、友人たちがどのようにして大地震を回避しているのか見てみましょう。」
月明かりの海の上を、いや、海の『下』を進んでいきました。
まだ『逆さま』だからです。
しかし、アミはそんな旅に慣れていたので、水平度など細かいことは気にしていませんでした。
海岸沿いの街の明かりが、直ぐそこまで近づいてくるのが見えました。
「ここがポイントです。
入ります。」
と、アミはサイドスクリーンを見て言いました。
今度は、海が迫ってきて、黒い水の中に入ってしまったので、突然ガラスの向こうが真っ暗になりました。
「海の底に行きましょう。
よく見えるようにそのスクリーンを通して見てください。」
前回と同様、窓ガラスの向こうは暗闇ですが、目の前のスクリーンは、周囲のものを鮮明に映し出しているのです。
アミが船をまっすぐにすると、まるで、地上を飛んでいるかのように見えました。
眼下には山々が連なり、不毛な谷が広がっています。
その場所でいう「鳥」ののように見えるもの、つまり魚やクジラや様々な種類の魚の群れを追い越しているのを見たとき、僕たちは海の水の下にいることを思い出したのです。
まるで空中にいるようにすべてが透明に見えました。
「とてもきれいね。」とビンカ。
すると、アミが、「すべてのものが、すべての瞬間が美しいのです。」と答えました。
すると、背景の遠方に、葉巻を水平にしたような細長い物体が現れ、急速に拡大しました。
それは、水中に沈んだ堂々とした宇宙船で、底の近くに吊り下げられていたのです。
まるで巨大な都市のようで、とても印象的なものでした。
近づいてみると、あまりの大きさに境界線がぼやけて見えないほどなのです。
何千もの照明付きの小窓があり、何十階もの階数であることがわかります。
「何なの?これは!」
ビンカが不思議そうな目をして尋ねました。
「母船です。
地球を助けるために関わる人々の中で最も重要なものなのです。
なぜだか、通常は見えないはずの成層圏まで降りてきたです。
飛行機の代わりに宇宙船を搭載する、いわば『空母』のようなものです。
また、数百万人の人間を収容することも可能です。
いつ多くの人の救助が必要になるかわからないため、常に近くに、しかし見えないところに置いておかなければならないのです。
地球救済計画全体の司令官が出張してくる場所でもあります。
彼らは、その船に永久に住み続けるのですから。
なぜ彼らが空ではなく海の中にいるのか、その理由が直ぐにわかるはずです。」
そして、アミがボードを操作すると、画面に男の顔が映し出されました。
その姿は、人々が想像する人類の偉大な霊的マスターのイメージを思い起こさせるものだったのです。
彼の内なる静けさは、通常の地球人よりも遥かに美しいのが明らかでした。
その静かな幸せ、調和、優しさ、そして平和
オフィルでもあんな顔は見たことがありません。
しかし、その顔立ちを見る限り、彼は本当の地球人のようでした。
ただし、その目は特別に大きく、優しさに満ちているのです。
僕はすぐに、その存在に畏敬の念と愛情を感じました。
「我らの親愛なる兄弟、司令官を紹介します。」
画面に映し出された男は、見知らぬ言葉で挨拶したましたが、イヤホンでその翻訳を受信できました。
「ようこそ、ビンカとペドロ。
私は、『地球救済計画』全体を統括する役割を担っています。」
「あ、あ、ありがとうございます。」
僕たちは、とても恥ずかしそうに答えました。
その顔にかすかな笑みを浮かべてから、彼は言いました。
「君たちの訪問を心より楽しみにしています。
では、家で待っていますね。」
そして、彼の姿は消えてしまったのです。
窓から外を見ると、巨大な船の下にある開口部に近づいていました。
垂直に入り、あまり広くない、完全に乾いた囲いの中に現れました。
他にもアミのような小型の船や、大型の船も停まっています。
地上に降り立つと、僕たちが入ってきた開口部はハッチで閉じられており、すべてが完全に乾いているのがわかりました。
すると、アミは立ち上がり「降りましょう。」と言ったのです。
「それは、外に出るということ?」
「もちろん、司令官に会いに行くのです。」
母船の乗組員を危険にさらさないため、地球人の微生物についてなど、いくらでも質問したかったのですが、尋ねる時間がありませんでした。
誰もそれを指示していなのに、ドアが開き、どうやってかわからないけど、転がる梯子が現れ、僕たちの船のドアの前に設置されました。
降りてみると、アミの『UFO』は3本足で立っていたのです。
しかも、彼が僕と『着陸』したのは初めてでした。
以前は、常に宙に浮いているような状態だったのです。
閉じた扉に向かって歩き、辿り着くと、扉が開き、明るく長い廊下が現れました。
天井は非常に高く、凹んでいて、柔らかいクリーム色に照らされて輝いていました。
ゴムのような柔らかい素材でできた床も、魅力的な水色に光っているのです。
壁は、何か柔らかくて不透明な金属でできているようでした。
大きな扉がいくつもあって、パノラマを完成させているのです。
中には、見慣れない文字で書かれた電飾看板もありました。
「仲間内の言葉です。」とアミが説明してくれました。
「それぞれの世界には、それぞれの言葉があると思ってたんだけど。」
「それはそうなんですが、特に文章を書くときには、お互いを理解するために共通言語を使います。
人工言語だから、みんな子供の頃から勉強しないといけないし、話すより書く方が楽ですけどね。」
「どうして?」
「舌、喉、声帯の形は、すべての人間が同じであるとは限らないからです。
ある音を出すのが簡単な人もいれば、難しい人もいます。
中国人がダブルRを発音するのに苦労するのと同じです。」
すると「中国人って誰なの?」とビンカが尋ねました。
「僕の世界のこのような目をした人々だよ。」
と僕は目を引き伸ばしながら説明しました。
「なんと美しいのでしょう。」
と、ビンカが答えたので、3人で笑いました。
僕たちは廊下の端にたどり着き、目の前にはかなり広い扉があり、それを開けるとエレベーターでした。
僕は、ボタンを探したけどありません。
すると、アミが、ただ「司令官」と言ったのです。
すると、小さなスピーカーから「許可済み」と声がして、ドアが閉まりました。
緩やかな動きを感じ、上昇していたのですが、突然、水平方向に進みました。
エレベーターというより、多方向に移動できる乗り物でした。
「この船は放射線を出して、空気中や地表にいるマイナスの菌を殺すので、あなたの微生物がクルーに影響を与える心配はありません。」
と、アミがその乗り物の中で、説明してくれました。
フェローシップ・ワールドに入る前に、全員が『消毒』されることになるのでした!
エレベーターのドアが開きましたが、入ってきたドアではなく、右側にある別のドアでした。
そして、1歩足を踏み入れると、様々な色と種類の自然の植物で飾られた、夢のように美しいホールが広がっていたのです。
なぜだかわかりませんが、宇宙船に植物があるなんて想像もつかなかったのです。
様々な色合いの光源があり、やや黄金色に近い雰囲気を醸し出しています。
そして、部屋のいくつかのコンパートメントはガラスで仕切られていました。
部屋のあちこちに置かれたさまざまな色の小さなスポットライトが、すべてを照らしています。
すると、石や苔、天然の藻の間を流れ落ちる歌う滝のような噴水が目に飛び込んできたのです。
「まさか宇宙船に魚がいるなんて....。」
ビンカは興奮を隠すことが出来ませんでした。
「なんて美しいの!!」
進化した魂は、美しいものに囲まれている必要があるのです。
と、アミは、僕たちを中に案内してくれたのです。


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