湯本実

小説を書いています

湯本実

小説を書いています

最近の記事

革命に関連した取るに足らない覚え書き

 革命とは『被支配階級が、支配階級を倒して政治権力を握り、国家や社会の組織を根本的に変えること』  革命とは、抵抗ではない。抵抗は革命に繋がる可能性があるが、抵抗そのものは革命ではない。革命を起こすにはまず、支配階級が何かを見定める必要がある。支配階級が何かを見定めるには、そもそも支配とは何かについて考える必要がある。  支配とは『ある地域や組織に勢力・権力を及ぼして、自分の意のままに動かせる状態に置くこと』  ここで二つ問題が生じる。一つは権力の及ぼし方。もう一つは自

    • 仮面舞踏会

       もし、次の瞬間には何にでもなることができるとして、何になりたい。  二年ほど前、兄に聞かれたのはたしかそんなことだった気がする。僕はその時、どう答えたのだろう。別に今のままでいいかな、と言ったような気がする。もうあまり何を思っていたのか思い出せないけど、あの時、口に出そうとした言葉と実際に口から出た言葉が食い違っていて、それが魚の小骨が喉に詰まって取れないように気持ち悪かったという実感だけははっきりと覚えている。あの時の僕は着け始めて半年くらいの《仮面》をいつも通り着けて

      • 異常祭報告書(ver.7)

        「異常だ!異常だ!わっしょい!わっしょい!」  異常人類はそう叫ぶ。異常人類の異常人類のための異常人類による異常都市で行われる異常祭の異常音頭が響き渡る。 「正常だ!正常だ!わっしょい!わっしょい!」  異常都市で正常に生活することを志す会、通称正常派が今年の異常祭にも現れた。異常人類の中では異常と呼んでも問題がない彼らの人口比率は異常都市で1%に満たない。  異常都市、それはユートピアである。異常都市では、あらゆる生活が保障されているため、労働という概念は必要ない。

        • (E)Motion Vol.1 「鯨が泣く部屋」サンプル

          <はじめに> 現在ネットプリントにて同人誌『(E)Motion Vol.1』頒布中です。私にとって初めての同人誌です。より多くの方に印刷していただきたいので今回は掲載作品「鯨が泣く部屋」の一部を試し読みという形でnoteに掲載することにしました。 以下のサンプルを読んでセブンイレブンのコピー機まで足を運んでいただければ幸いです。 <印刷方法>(セブンイレブンのみで印刷可です) 表紙はカラーで本文は白黒で読まれる方 予約番号:41720242(表紙:カラー) 予約番号:53

        革命に関連した取るに足らない覚え書き

          往復書簡(過ぎ氏さん,1通目)

          過ぎ氏さん お久しぶりです、こんばんは。以前に会ったのはいつかも忘れそうになるくらい随分お会いしていないように思います。1年前のちょうどコロナがそのうち始まるかどうか、あたりですよね。コロナって時間感覚がすこし変になりませんか? 最近、過ぎ氏さんを思い出したことと言えば、先週土曜日に県立美術館に行った時でしょうか?美術館に行くと、過ぎ氏さんと長期休暇に一緒に展示を見に行って楽しかったことを思い出します。今回見に行ったのは、栗田宏一・須田悦弘展だったのですが、栗田宏一の作品

          往復書簡(過ぎ氏さん,1通目)

          こんにちは、君がいない世界

          (2017年に書いたものです)  ある人がいなくなっても人を取り巻く世界は変わらない、ということを信じている人が多いように思える。だが、考えて欲しい。その仮定がもし正しいならば、世界から自分以外の人が全員消えても世界は変わらない、ということも正しいことになる。  人はどのように個人を特定しているのだろう。最初に思いつくのは名前ではないか。しかし、僕の名前は一般的な名前で、おそらく同姓同名の人もいるように思える。では、その人のしてきたことではないか。確かに一代で大金持ちにな

          こんにちは、君がいない世界

          朗らかな青色

           私は毎日食べる味噌汁の味がどれも全く異なるもののように感じるようになってしまった。  以前はそんなことはなかった。毎日食べる味噌汁はいつも同じだった、少なくとも同じだと感じる程度には。けれども、1ヶ月前に映る景色に感じたことがない違和感を感じ、病院に行き、全身性知覚過敏症候群/Systematic Hypersensibility Syndrome/SHS病、通称知覚過敏症と診断されて以降、徐々に全ての感覚がおかしくなり始めた。どうやら全身の感覚を担う細胞の数を抑制する機

          朗らかな青色

          病に臥す貴方へ

          病に臥す貴方へ