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『音楽の海岸』 村上龍

マゾヒストについての引用が多めです。

小説の冒頭には「中上健次に捧ぐ」とある。主人公の"ケンジ"って、もしかして『イン ザ・ミソスープ』と同じ主人公?


マゾヒスト

「植物人間になりたいというマゾヒストがいる」というのをどこかで読んだのですが、この小説ではなかったみたいです。

友人が、そいつは根っからの変態で、自分の女を他の男に目の前で抱かせるのが大好きな奴だったんだけど、そいつに電話をするようになって、ますます自分がマゾヒストであることがわかってきたんだ、マゾヒストについてもずいぶん考えたよ、別に痛いのが好きなんじゃない、決定したり、考えたりするのがイヤなんだ

p33

マゾヒストと呼ばれる男は何人か知ってるが、そういう奴に限って妙にプライドが高い、社会的な地位とかに敏感で例えば何か特権的な集まりに招待されてウキウキしているくせに受け付けでの対応が悪かったりすると突然怒鳴り出したりする

p38

マニアックの度合いが強いマゾヒストに限って、女王を選ぶ基準が厳しい。身長と、容貌と、精神科医に似た臨床的な知性が必要で、本質的に母性を感じさせなくてはいけない。

p166

マザコンの男にはマゾヒストが多いんだ。変な話になってしまうが、ムチをふるう女王様に、母親を見てしまうんだろうな。正確に言えば、女王という存在を設定することによって、本能的には母親から離れようとしてるんだろうけどね。

p194

旧ソ連のラーゲリ

囚人を輸送するとき、食べ物がほとんどない状態にしておく。2日ほど飢えさせたところで、魚の干物を与える。

何も知らない可哀想な囚人達は貨車の床に放り投げられた魚を手づかみでガツガツ食うわけだよ。飢えてるから見境いなく奪い合うようにして、殴り合いのケンカの果てにほとんど丸々一匹くらい食べてしまう」

「それで、食べ終わって十秒もしないうちに死んでしまいたいほどの喉の渇きが襲ってくるわけだが、看守達はそれを楽しみたい一心で看守をやってるわけだから、水は一滴も与えない。

その後、囚人たちに十分に敗北を認めさせたあと、魚の内臓と卵の腐ったものを桶に入れて与える(いろいろ試した結果、この魚の内臓と卵が一番ひどい臭いだったため)

どんなに頭がおかしくなっていても絶対にその腐った内臓と卵の、グジュグジュした汁状のものを飲む奴はいないんだってさ」

p156

その他

体を売るのも絵を描くのもそれが必要だからやるんで、やらないのは必要じゃないからだ。

p133

>こいつは本当に怒っている、とケンジは思った。だが、怒りで、ある関係性を壊してしまうことに慣れていない。小さい時から、どんなに不愉快になっても我慢しなさいと、教えられている。

>オレもかつてそうだったが、こいつらは怒りが込み上げてきた時に、どうしたらいいのかわからない。関係性を壊すための言葉を持っていないから、死ねとかマヌケとかブスとか豚とかしか言えない。本当に怒った時に何をすればいいのかわからないから、マニュアル化した暴力を使う。

p197

貧しい国には選択肢がない。
警察官でも月給は10ドル程度。コカインの運び屋をやると1000ドル以上になり、数回で田舎に家が買える。

連中は協力しろと言ってきて断ると家族の指を切ったり腕を折ったりする」

p315

ペルー人のヘスー。ラテンアメリカで育った人間は、食べ物に対する習慣が違う。

 ヘスーは缶ビールを缶のままでは、決して飲まない。パンも焼いたやつしか、食べようとしないし、肉もウエルダンで、生野菜は食べない。

 大金持ちとか、あとコスタリカとアルゼンチンは、少し違うけどね。ものすごく病原菌が強いのがいて、そういうので、あたると、まず絶対に助からないんだよ。日本がクリーンなのは知ってるけど、何でも、くせになるとなかなか直らないんだよ。

p312

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