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小説に登場する株式仲介人

「ムッシュー・テスト」 ポール・ヴァレリー

世間に姿をあらわさず、ひっそりと暮らしている40歳くらいの男性。

"異常な早口で、しかも声が低くこもって聞き取りにくい"
"微笑むこともないし、今日はも今晩はも言わない。「お元気ですか」と言われても耳に入らないようだった。"

彼とは夜しか会ったことがない。あやしげなところで一度、劇場では何度も。ひとから聞いたところでは、終日は株式取引場でたいした額でもない売り買いをして暮らしているとのことだった。

「どんなものごとについても、それを認識するのが、実現するのが易しいか難しいか、わたしはただそれにしか関心がないね。難易の度合いを測ることには極度の注意をはらっている、しかも何ごとにも執着しないようにしているんだ…… そもそも、よく知っていることなど、わたしに何の意味がある?」

「だれそれは美しいとか、並はずれているとかいうのも、みんな他人にとっての話だ。連中は他人に喰われている!」

小林秀雄による翻訳もあるが、誤訳が多いとの噂も
ネット上で読めるテキストもありました。

「テスト氏との一夜」(PDF)
https://hermes-ir.lib.hit-u.ac.jp/hermes/ir/re/9903/HNjinbun0002400030.pdf



「スティル・ライフ」 池澤夏樹

主人公の友人として登場する佐々井

「株の運用はおもしろかったんだ。今やっているのより金額もずっと大きかった。やりかたも派手で、こんな堅実なものじゃなかった。値の動きが一つの周期に乗っているのが、感じとれるんだ。波にゆられていると、次第に波の周期や波長が感覚でわかるみたいに。

「人間関係のネットワークの中に立って、その一つの結び目として機能して、それに見合う報酬を得るということをやめてしまった。社会にとってぼくは、時おりアルバイトの場に無名の労働力として登場する以外は、いないも同然なんだ。つまり透明人間さ」

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