飴ちゃんという凶器

ペコちゃんのペロペロキャンディをご存知だろうか。わたしはあれを見ると焼肉屋さんを想起させられるのだけれど、飴ちゃんが苦手になって久しく口にしていない。

先日、保育園のおなじクラスの親に長女がそれをもらうことがあった。彼女がもらったのは透き通った紫色の、たぶん葡萄味。目をキラキラさせていた。よほど美味しかったようで(我が家はわたしが飴ちゃん苦手なので食べさせたことがなかった)スーパーでせがまれてひとふくろ、購入した。

我が家のルールで、ご飯を残したらお菓子は無し、というのがある。ペロペロキャンディを買った日は頑張って夕飯を食べ、食後に食べたいと赤いやつを選んで食べていた。たぶん、苺味のやつ。離れたところにいても、匂いだけでもちょっと幸せになれそうな、甘い匂いがしていた。

その間、次女のミルクの時間だったので調乳していたら、次女がふにゃふにゃとグズったので、長女は苺味のそれを舐めながら次女をあやしてくれていた。

調乳が終わり、時間的に寝室で与えようかなと次女と移動し、ミルクを与えていたとき、なんだか違和感を感じた。次女からミルクではない、甘い匂いがする。

慌てて長女に、飴ちゃん食べさせた?と聞いたら、うん、という。これは大変だと思い、ペコちゃんのパッケージを裏返す。幸いなことに蜂蜜は使っていない。盛大にほっとしたが、長女には釘をさしておかねばならない。しかし彼女はグズっている次女に、良かれと思って自分の好きなペロペロキャンディを上げたのだと思うと、きつく言って聞かせるのもなんだか違う。苦心の末、赤ちゃんはミルクしか飲めないから、いくらあなたが美味しいと思ったものでもあげないで、あげたくなったらお母さんかお父さんに聞いてね、と伝えた。

子育てをするようになる前までは、蜂蜜が1歳未満の子供には毒だという知識がなかった。が、それを知ってからというもの、長女が1歳を超えるまでは神経をすり減らしたものだった。食パンなど、気にしないと思いつかないものに使われていたりするからだ。久しぶりに次女という赤ちゃんが我が家にやってきて、少し気を抜いていた。まだまだ半年以上、また神経をすり減らす日々が続くのだ。

飴ちゃんが凶器になりうる世界で生きていかねばならない。もう少ししたら、小さなおもちゃなど飲み込めるサイズのものにも神経をすり減らすことになる。が、こればっかりは親や周りの大人が環境を整える他ないので、やるしかない。

…少しだけ、幸せの甘い匂いがする飴ちゃんで殺される可能性がうらやましく感じた。産後の不調や、母親への幻滅、現状から希死念慮の亡霊が復活したわたしにとっては、それがとても甘美なものにも思えた。

でも、子どもを危険に晒すわけにはいかない。また明日起きたら、透き通る綺麗な飴ちゃんという凶器に我が子が泣かされないように守っていかねばならない。長女のやさしさも、また然り。

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