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心の風景1

都合よく思い出が作られていく。
すべてのものが風化していく。物だけでなく記憶も風化していくものだ。
歳をとって頭のネジが緩くなった分だけ記憶の繋がりも緩くなる。
擦り減ったり無くなってしまった部品は、交換したくても在庫がない、そこらへんに転がっている部品のかけらやネジを拾い集めて組み立て直す。元の姿とは似ても似つかないものになってしまったりするけれど、それはそれでちゃんとうまくそこに収まっていて、使い心地も悪くない。
風化して断片的に残る記憶。
記憶の断片と断片をつなぎ合わせるために、今度は想像を駆使してその余白を埋めていく。それは自分に都合良くつなぎ合わせた新たな記憶として残っていく。思い出が美しいのはそのためだ。
記憶の中の風景も、幼い頃の風景は時代の移り変わりの中で元の姿は消え、新たに別の佇まいを醸し、その時代の人の心の中に記憶されていく。その佇まいを私が見たとききっと昔の風景の記憶と重ねて消したい記憶と残しておきたい記憶とを無意識に選別しつなぎ合わせ、新たな心の風景が思い出となって残っていくものかもしれない。
思い出の中の情景はますます遠ざかり、書き換えられたりするので、自分の記憶をたどることで自分の歴史を正確に認識できるかどうかというとあまり当てにならない。
それでも思い出という、人間に与えられた能力は死ぬ間際に見られるらしい「走馬灯のように甦る」ことで死への覚悟と生への執着にケリをつけるための大事な機能であるのかもしれない。

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