【本棚から冒険を】おたんじょうびのおくりもの(絵本)
ご近所付き合いが希薄化して久しい現代(詳細は内閣府の『社会意識に関する世論調査』をご参照ください)。COVID-19によって地域のお祭りや自治会の行事などが中止となり、特に東京都のような都会では希薄化の進行が懸念されています。
そんな現代だからこそ、ご近所の方の温かさを感じることのできる絵本が必要なのではないでしょうか。
村山桂子さんによる『おたんじょうびのおくりもの』は、友達に贈る誕生日プレゼントを探す過程を描きながら、近所の人との交流を読者に想像させる作品です。
主人公のぴょんぴょんは、みみーの所へ遊びに行こうとして、大切なことを思い出します。
プレゼントを買いに行く時間がないため、家にある物で、何か贈り物になるような物がないか考えるぴょんぴょん。そして、りんごが一つあったことを思い出します。
何気ない文章ですが、この一文からは近所同士で手伝う・お礼が当たり前であることが伺えます。
「あれれ?」---「そうだ!ぼく…」を何度か繰り返しながら家中を探すうち、ぴょんぴょんは重大なことに気が付きます。
ここで別の近所の方が登場します。現代っ子の感覚だと「食べさせたいならスーパーで買えばいい。」という思考に陥りますが、密接なご近所付き合いだと“おいしそう・どうぞあげます”が成立するのか、と温かい気持ちになります。
プレゼントするものがなくなったぴょんぴょんですが、メーメおばさんからの思わぬお返しで、無事にみみーへプレゼントを渡すことができます。
なかなか現代ではできない関わりですね。しかし、絵本の中でぴょんぴょんと一緒に体験するつもりで読むと、読み終えた後に心がほっこりします。
雪が降り積もる季節の物語なので、今が“旬”の絵本です。
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