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アラフィフ・ビターデイズ❶

それは突然やってきた

 ああ時の河を渡る舟に 
オールはない 流されてく

「Woman "Wの悲劇"より」作詞:松本隆 作曲:呉田軽穂

朝起きたら、頭の中に若い頃の薬師丸ひろ子の歌声がこだましていた。昭和の映画「Wの悲劇」の主題歌だったような。

オールのない舟。まんま自分のようで、思わず失笑。
息子も高校生になって、子育てはほぼ終了。さあ、これから先の人生、どんな旅にしようか。改めて自分にフォーカスしてハッとする。絵が見えない。まるで大海原の漂流船状態。いや、ここ最近は、座礁しているかもしれない。その障害は岩ではなく、更年期症状。

 ある日突然、ゲップが止まらなくなった。
暗礁にもほどがある。一日中ゲップばかりで会話がしにくい上に、腸もギュルギュルと鳴り続けて、なんだか騒がしい。追い討ちをかけたのは、これが終日おさまらないこと。ベッドに入ってもゲップと腹鳴りがエンドレスで、とうとう不眠症になってしまった。

これはまずい。経験したことのない不調に、藁をもすがる思いで消化器科を受診。念のため胃カメラと大腸検査をするも、異常なし。内科なら診断がつくだろうと、期待を胸に駆け込むも、あっさり玉砕。
「呑気症っていう、無意識に空気を飲み込みすぎるとなる症状があるんだけど、それかなぁ。精神的なものも要因だから、なかなか治らないんだよね‥‥」
医者も匙を投げた。瞬間、見えている景色から、色が消えた。

何かがおかしい。もしやホルモンの仕業か。
そう気づいたのは、症状に悩まされて1ヶ月が過ぎた頃のこと。婦人科で血液検査をすると、予想通り、更年期真っ只中だった。
処方された漢方薬で、腹鳴りは徐々におさまったが、相変わらずゲップはしぶとかった。ならばホルモン治療はどうかと提案され、貼るタイプの薬で様子を見ることに。これが私にはとても合っていた。治療開始から2週間ほどで症状が霧散した。辛さから解放されて、改めて思う。揺らぎの時期は、我慢しないでかかりつけの婦人科医に頼ろう。心もだいぶ軽くなった。

それにしても恐るべき、ホルモンよ。目に見えないけれど、これまでずっとずっと、驚異的な力で私の心身を支えてくれていたのか。その素晴らしすぎる働きに、もはや畏敬の念しかない。
こうして五十路にして図らずも、荒波に揉まれる旅が始まってしまった。
この先の人生、「ヨーソロー」となるか。まだ私も知らない。
現場からは以上です。

佐藤英子
NPO法人ハートフルコミュニケーション認定コーチ


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