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お兄ちゃんばっかり!

神奈川の森屋です。
前回、高1思春期の娘について書きました。高校に入学してから、娘との会話が少なくなっていましたが、最近は部屋に篭ることも少なくなり、学校であった楽しい話だけでなく、先生に叱られた事も教えてくれるようになりました。

そんなある晩のこと、娘と見ていたテレビ番組で、親子のドラマが始まりました。
「お母さんはお兄ちゃんのことばかりで、私のことは気にしていない」
そんな高校生の妹の気持ちが聞こえてきた時、私はドキっとしました。ドラマの中で、母とお兄ちゃんの会話を黙って聞いている妹の姿が、今年の春大学生となった息子と私を見ている娘と、重なったのです。私はドキドキしながらドラマを見続けましたが、娘の顔を見ることができませんでした。私が心のどこかでずっと気にしていたことを、再現されているようだったのです。
ドラマが、クライマックスを迎え「お母さんが愛しているのはお兄ちゃんだけで、私は愛されていない」と思っていた妹の誤解が解け、「お兄ちゃんと同じように自分も愛されていた」ということがわかり母と妹が抱き合うと、隣にいた娘が「良かった!」と手を叩いて歓声を上げました。
(やっぱり同じことを思ってたのね)と思いながら娘を見ると、笑顔の瞳から涙が溢れていました。(そんなに?!)何か胸に突き刺さるその涙・・・。

「あなたもお兄ちゃんばっかりって思ってた?」
勇気を出して聞いてみました。
娘は少し考え「んーそう思ったこともあった」と、遠慮がちに短く答えましたが、もっと言いたいことがありそうな様子。
「そっかあ、確かにお兄ちゃんの高校3年間はそうだったよね。実はね…お兄ちゃんが第一希望の高校に落ちた時、私も一緒に高校生活を楽しんで、お兄ちゃんを応援しようと思ったんだ」
「ふぅ〜ん」
「もちろん、あなたのことも応援してたよ」
「うん、わかってるよ」
この時は、そんな会話で終わりました。
2人とも愛しているのに、ちゃんと伝わっていなかったことがわかり、私のモヤモヤが始まりました。それからしばらくの間、息子の高校3年間と合わせて、娘の中学3年間を振り返る日々を過ごしました。

息子は、中学までサッカー部でしたが、高校で駅伝部に入ると早々にケガ続き。走れずに焦る息子の足裏マッサージを始めたところ、お互い自然に会話ができることに気が付き、大学の寮に入るまで3年間、マッサージがコミュニケーションツールとなりました。
娘は、塾や習い事の送迎時の車の中で、また私の家事の合間を見つけて、その日の出来事を自分から話してくれていました。私のなかでは、娘との会話の方が多かったと思うくらいだったのです。それで、娘は「大丈夫」と、安心していた私でした。
それなのに、なぜ心のどこかでずっと気になっていたのだろう? 
振り返るなかで、思い当たることがひとつありました。
私が息子のマッサージをしている時にいつも「おやすみ〜」と布団に入る娘に、私から「お兄ちゃん終わったらあなたの番ね」と言ったことがありました。その時「うん!」と、寝ずに順番を待ち「気持ちいい〜」と言いながら眠りに着いた娘の嬉しそうな顔が、ずっと心に残っていたのです。

「お兄ちゃんをマッサージしてた時、あなたもやってほしかった?」
先日、「おやすみ〜」と寝ようした娘に、照れくさい気持ちを抑えて聞いてみました。
「え〜、ん〜やってほしかった」
「やっぱりそっかぁ、いつもおやすみ〜って寝ちゃうから。お兄ちゃんみたいに『マッサージして』って言えばよかったじゃん。言えなかった?」
「え〜、だって、ママ大変じゃん、お兄ちゃんはマッサージして〜が口癖だったから、しょうがないって思ってた」
思わず娘を抱きしめ「優しいね! 大好き! 我慢させちゃってごめんね」。

やっとわかりました。
「お兄ちゃんばっかり」と思っていた当時の娘は、私との時間を作るために、一生懸命話してくれていたのだと思います。
今その兄は、寮生活で家にいません。
高校に入学してから、娘との会話が少なくなったのは、思春期のせいだけではなかったことがわかりました。

「あなたのこと大好きだよ、愛している」
子どもが小さい頃は、毎日何回も言っていたはずなのに、いつから言わなくなってしまったのだろう?
これから、ちゃんと言葉で伝えようと思います。

2019年10月21日
神奈川県/森屋弘美
NPO法人ハートフルコミュニケーション認定ハートフルコーチ 



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