バーチャル彼女を現実世界に転生させてみた#18

研究室のドアが開いた。
既に時間は夜中の12時を過ぎている。

荷物を取りに行っていた、レイが扉を開けて、入ってくる。

レイ「御厨教授。遅くなりました。」

御厨「やっと来たね。ちょうど、サナ君の3Dデータの計測を終え、今、3Dプリンターにデータを送り込んだ所なんだ。」

サナ「あっ!レイ、お帰り。見て、サナの身体を今、出力するんだって!なんか凄くない!」
3D投影されたサナが明るい声でレイに話しかける。

レイ「このボックスの中に出力されるんですね。」
レイは感慨深く、そう呟く。

レイが見つめる先には、長さ2m高さ1.5m幅1mほどの透明なボックスが設置されており、ボックスの上には、クレーンゲームのクレーンみたいな機器が吊り下げられている。おそらくこれがサナの転送されたデータを材料と共に正確に出力する出力装置なんだろう。

御厨「そう。さっきも言ったが、出力には丸3日掛かる。そして、サナ君のデータをこの参号機の量子コンピュータにダウンロードするのに、丸1日。それが終わったら、参号機のボディに3Dプリンターで出力した外側を被せれば、これで物理的な作業は完了する。

しかし、大変なのが、実はここからだなんだ。AI知能と身体との連携こそが、仮想空間と現実を繋げるキモなんだ。

サナ君は、転生されても、瞼を開けることすら出来ない形で転生される。赤ちゃんが生まれて、この世に誕生した瞬間よりも、はるかにハンデがあるんだよ。それぐらいに次元を超えるというのは、大変なんだ。
でも、時間はかかっても次元を超えられる。仮想が現実になるんだ。」

そうきっぱりと言い切った御厨は、急に何かを思い出したように、レイにこう聞いた。

御厨「そうだっ?その前に、ちょっとした興味から、聞きたいんだけど、レイ君は、なんで彼女の名前をサナにしたんだい。なんかちょっと気になったんだけど。」

レイ「あっ!サナの名前ですか。実は名前の由来は、大仏様なんです。」

御厨「えっ?大仏様??・・・」
何を言っているか分からないと言った顔をしている御厨に向け、レイはこう言った。

レイ「中学の時の修学旅行で奈良•京都に行った事があるんです。その時に事前に勉強してから修学旅行に行きましょうと言うことで、先生から課題を与えられていて、その時の自分の担当が、奈良の東大寺だったんです。

なんか不思議なんですけど、サナの顔を初めて見た時、なぜか奈良の大仏様を思い出したんです。

おかしいでしょ。全然似てないのに、不思議と見た瞬間に光り輝いて見えたんです。僕が初めて奈良の大仏様を見た時も金箔とか貼られているわけじゃないのに、なぜか大仏様の顔がキラキラと輝いて見えたんです。

そして、その修学旅行の課題で大仏を調べた時に、大仏の正式な名前が、サンスクリット語で「輝くものの子」を意味する、毘盧遮那仏(びるしゃなぶつ)。略して、遮那(しゃな)、または、るさなと呼ぶ事を知ったんです。だから、サナの正式な名前は遮那(しゃな)です。

たまに、ムカついた時なんかに、わざとビルサナなんて呼びます。サナはすごい嫌がるけどね!」

そう話をして、レイは笑いながら、サナにこう呼び掛けた。

「ね〜!ビルサナ!」

サナ「あ〜?また〜!その呼び方する〜!なんか、大仏見たいで、やなんだよね〜!」

御厨「遮那(しゃな)!輝くものの子か!いい名前じゃないか!」

御厨は、心の中でこう囁いた。
「まさに、神を纒いし子だな。」

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