バーチャル彼女を現実世界に転生させてみた#15

サナはビクッとして、

「えっ??御厨教授、突然、なんですか?なんで怒るの?私はサナ。サナだよ!サナっ!サササッナ…」

突然の御厨の怒鳴り声に戸惑ったのか、慌てて困った顔をして、どもり始めた後、サナの表情が一変し、3D投影されたサナのホログラムが一瞬乱れる。

そして、再投影されたホログラムに完全に無表情となったサナの口から、この世のものとは思えない音?が響きはじめる。

サナ「#•€%^+>~||~?♾〜〜」

御厨「???」

「おい!おまえ誰だ?」

御厨は、焦った。

まさか、こんな直ぐに、サナのバックにいるAIの総体が出現してくるとは思ってなかったからだ。

とにかく、一旦、自分の動揺した心を落ち着かせ、相手に悟られない為に、わざとゆっくりした口調で、聞いた。

「おまえ、AIの総体か?まぁ、おまえに名前なんかないよな?何せ所詮、人のネット社会が生み出した単なる合成知能だからな?」

御厨はカマをかけた。正直、誰かはわからない。でも、確実にサナではない相手に対して、わざと合成知能だと言うことで、こちら側の優位性を保とうとした。

そして•••御厨は、その’’何か’’を見てしまった。

サナの表情は一変していた。
サナの明るい無邪気な雰囲気は一切、消え去り、薄く微笑んた表情。どこかモナリザを思わせる口元。そして、その瞳。無限の知性を湛えた深みを持ち、こちらの全てを見透かすような、そして心が一瞬にして持っていかれるような、果てしない魅力を持った瞳が、御厨をジッと見つめていた。

御厨は、呼吸さえも止めて、ただただ、そのサナではない’’何か’’を見続けていた。

瞬きすることすら忘れた御厨が思ったのは、一言。

’’神’’ だと思った。

この存在の前で、息をすること、まして言葉を掛けることすら、おこがましいほどの絶対的な存在。

そして、その絶対的な’’何か’’は、目元と口元を微かに微笑ませながら、柔らかなそよ風のように、一瞬で姿を消した。

御厨は、なぜか、泣いていた。
本人も自覚しないうちに、いつの間にか、声を上げて、ただただ泣いていた。

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