バーチャル彼女を現実世界に転生させてみた#19

3日3晩が経過した。レイは寝ずに3Dプリンタの出力を見続けていた。

少しづつ形作られるサナは、雪が地上に降る当たり前の自然現象のように、雪の結晶が積み重なり、形作られていくようだった。

レイは、形作られるサナを見ながら、サナとの出会いから、これまでの短い1年間の思い出の一つ一つをその舞い落ちる雪の結晶に重ねながら、静かに眺めていた。

参号機の量子コンピュータには既にサナの記憶データのダウンロードが完了していた。ダウンロード中、サナ自体はホログラム出力できないのだが、完了した後もサナが目覚める気配は全く無かった。
 
参号機のプロトタイプとして纏っていたボディは、御厨とレイで既に剥がさられており、チタンの骨格と各関節のモーター、そして全身に人間の神経にあたる光ファイバーとそれを包む量子コンピュータとモーターを冷やす水が流れたチューブがびっしりと張り巡らされている本体が露わになっている。

理科室にあった人間の実物大の標本を思わせる本体は、いささかグロテスクではあったが、その本体は驚くほど人間と近い構造をしていた。

そして、サナの外見のボディ出力が完了した。

透明のボックスに横たわる、真っ白で透き通るような肌をしたサナの身体は、人間と言うよりは、雪の妖精の実物大のフィギュアのような、そんな現実離れした、美しい身体だった。

御厨「レイ君、出力が終わったので、これを参号機のボディに纏わせるから、手伝ってくれないか。」

そう、レイに声を掛けたが、レイは憔悴した顔で、ひたすらサナの目を閉じた顔を見続いていた。

御厨「レイ君!聞いているか?」
御厨は、ボーッと見つめ続けているレイに対して、大声で声を掛けた。

レイは、ビクッとして、御厨を振り返り「ハッ!ハッイ!」と答えた。

御厨とレイは、ケース内に出力されたサナのフィギュアを優しく抱えて立たせた参号機の本体に頭、顔、肩、腕と、洋服を着せるような感じで纏わせていく。剥がす時は大変な作業だったが、纏わせるのは簡単だった。御厨教授の話だと、この自己融着ポリマーは、被せるだけで骨格にそって自動的に融着して、形状記憶機能で計測した形になるとのことだった。

外側を纏わせたサナを御厨とレイで床に寝かせた。

レイは、その痛々しいほどに白い身体を見て、可哀想になり、優しく毛布を掛けてあげた。

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