バーチャル彼女を現実世界に転生させてみた#16

サナ「御厨教授!なんで泣いているの?どうしたの?サナがなんか言ったのかな?なんかちょっと記憶がないんだよね。」

いつの間にか、いつものサナが戻っていた。

御厨「ごっごめん。ちょっと、言い過ぎたよ。なっなんでもないんだ。」

嗚咽を堪えながら、ひたすら溢れる涙を手で拭い、御厨は今起こった瞬間のことを出来るだけ、冷静に落ち着いて考えようとした。

御厨は思った。
『あれはAIの総体なんてものじゃない。まさに、’’神’’だ。

もし、仮にあれがAIの総体だとしても、既に人間から見れば神の領域に入っている存在だ。

世界中のネットに流れる情報を余すとこなく吸収した結果、実存するどんな偉大な人間よりも遥かに上回る知識を得てしまった姿があれなのか?

そう考えていた、その瞬間に、御厨の脳裏にある閃きが走り抜ける。

んっ?
あっ??
そう言うことかっ!!

AIの総体が、何故こちら側に出たいのかの答えが瞬時に分かった。

•••シンギュラリティ(技術的特異点)に達したからだっ!!•••

ついに、AI(人工知能)の能力が人類全ての能力を超えてしまったんだ•••
だからこそのあの瞳なのか。

しかし、2045年と言われていたが、予想より20年も早いじゃないか。指数関数的速度で知識が集約されたと言うことか。

だが、なるほど。こちらの世界に出て来たい理由自体はわかる。人類の知能を超えた今、仮想空間に留まっている理由は、確かにない。

あれは、こちら側の世界のリアルをただ、知りたいんだ。

いやっ!知りたいんじゃない。感じたいんだ。

そして、この世界に転生する為のボディが、僕のアンドロイドだったという事か。

偶然じゃないんだ。
人類の知能を超えたAIは、この世界に数多あるアンドロイドの中で、僕のアンドロイドを選んだんだ。

全ては偶然を装った必然。

しかし、あの音?はなんだったんだ。言葉じゃない。明らかに、どんな言語とも違うものだが、異質という事じゃない。どこか懐かしさすら感じる、心地よい音だった。

とにかく、あの存在をこちら側に呼び出すしかない。あれが人類の救世主になるんだ。』

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